天谷 健一 (Kenichi Tenya)
- 所属:
- 信州大学(教育学部)教授
- 研究題目:
- 一軸応力下比熱・磁歪測定によるスピン三重項超伝導二段転移の解明
- 領域での役割:
- A01班公募研究代表者
■ 研究室 ■新学術研究紹介 [217KB]
これまでの研究
酸化物高温超伝導体が発見された年に大学に入学したからか、大学院生時代は酸化物高温超伝導体研究(特に磁束ピニング)の研究を行いました。北海道大学時代から、重い電子系化合物と呼ばれる希土類・アクチノイド元素を含んだ物質やRu酸化物などの強相関電子系物質の新奇な磁性と異方的超伝導の研究を行い、現在に至っています。
本領域での研究
Sr2RuO4は超伝導転移温度が 1.5 K のスピン三重項超伝導体ですが、超伝導が消失する磁場(上部臨界磁場)直下でもう一段超伝導転移が生じます(図は磁化曲線での二段転移の例)。また、Sr2RuO4と析出相の界面において、本来の超伝導(1.5K相)の他に、超伝導転移温度が約 3 K の超伝導(3K相)が生じることが知られていましたが、3 K 相の体積分率は c 軸方向の一軸応力によって劇的に増大する一方、1.5 K 相の超伝導転移温度は、一軸応力によって減少することが明らかになってきました。磁場下での超伝導二段転移や奇妙な一軸応力依存性の起源を明らかにすることがスピン三重項超伝導の発現機構の本質的な解明につながると考えられます。
本研究では、一軸応力下での比熱測定、磁歪測定を行ない、この超伝導転移の一軸応力依存性と磁歪の磁場依存性を比較することにより、一軸応力依存性や超伝導二段転移の起源を明らかにすることを目指します。
略歴
- 1990年
- 慶応義塾大学理工学部物理学科卒業
- 1993年
- 日本学術振興会特別研究員(DC2)
- 1994年
- 慶応義塾大学大学院理工学研究科物理学専攻 博士後期課程中途退学
- 1994年
- 北海道大学理学部 助手
- 1995年
- 博士(理学)(慶應義塾大学)取得
- 1995年
- 北海道大学大学院理学研究科 助手
- 2001年
- -2002年マックスプランク固体化学物理研究所(ドイツ、ドレスデン)客員研究員
- 2006年
- 北海道大学大学院理学研究科 助教
- 2007年
- 信州大学教育学部 准教授
- 2011年
- 信州大学教育学部 教授、現在に至る
代表論文
"
Change of antiferromagnetic structure near a quantum critical point in CeRh1-xCoxIn5"
M. Yokoyama, N. Oyama, H. Amitsuka, S. Oinuma, I. Kawasaki, K. Tenya, M. Matsuura,
K. Hirota and T. J. Sato
Phys. Rev. B 77, 224501-(1--5) (2008).
"
Unusual Magnetic response in the Superconducting Mixed State of Sr2RuO4"
K. Tenya, S. Yasuda, M. Yokoyama, H. Amitsuka, K.Deguchi and Y. Maeno
J. Phys. Soc. Jpn. 75, 023702-(1--4) (2006).
"
Competition between hidden order and antiferromagnetism in URu2Si2 under uniaxial stress studied by neutron scattering"
M. Yokoyama, H. Amitsuka, K. Tenya, K. Watanabe, S. Kawarazaki, H. Yoshizawa and
J.A. Mydosh
Phys. Rev. B 72, 214419-(1-9) (2005).
"
Low Temperature Magnetization of the Skutterudite Superconductor PrOs4Sb12"
K. Tenya, N. Oeschler, P. Gegenwart, F. Steglich, N. A. Frederick, E. D. Bauer and
M. B. Maple
Acta Physica Polonica B34, 995-998 (2003).
"
Magnetic Field Response in (U,Th)Be13"
F. Kromer, N. Oeschler, T. Tayama, K. Tenya, T. Cichorek, M. Lang, F. Steglich,
J.S. Kim and G.R. Stewart
J. Low Temp. Phys. 126, 815-833 (2002).
"
Magnetization Study on the History-Dependent Peak Effect in the Superconducting Mixed State of CeRu2"
K. Tenya, S. Yasunami, T. Tayama, H. Amitsuka, T. Sakakibara, M. Hedo, Y. Inada,
E. Yamamoto, Y. Haga and Y. _Onuki
J. Phys. Soc. Jpn. 68, 224-231 (1999).
"
Anisotropic Magnetic Response in the Superconducting Mixed State of UPt3"
K. Tenya, M. Ikeda, T. Tayama, T. Sakakibara, E. Yamamoto, K. Maezawa, N. Kimura,
R. Settai and Y. _Onuki
Phys. Rev. Lett. 77, 3193-3196 (1996).