竹内 宏光 (Hiromitsu Takeuchi)
- 所属：
- 大阪市立大学（大学院理学研究科）講師
- 専門分野：
- 低温物理学理論
- 研究題目：
- (B01) スピン三重項超流動体の新奇界面現象
- 領域での研究テーマ：
- 超流体の界面における新奇素励起の理論的研究
- 領域での役割：
- B班連携研究者
■ 個人のホームページ
これまでの研究
これまで冷却原子気体ボース・アインシュタイン凝縮体における超流動や位相欠陥に興味を持って研究を進めてきました。最も印象に残っている研究は、超流体におけるケルビン・ヘルムホルツ不安定性のダイナミクスを明らかにした研究です。古典流体におけるケルビン・ヘルムホルツ不安定性は、せん断流中の界面に特徴的な渦巻きパターンを生むことで知られており、最も基礎的な流体力学的不安定性として古くから様々な分野で研究が行われてきました。この研究では、超流動性や量子渦などの巨視的量子効果によって、古典流体では見られない新奇な不安定ダイナミクスが２成分冷却原子気体ボース・アインシュタイン凝縮において発現することを理論的に明らかにしました。また、超流体と宇宙・素粒子論との間に普遍的に横たわる物理現象にもたいへん興味を持って研究を行っています。
本領域での研究
スピン三重項超流動ヘリウム３における界面、量子渦や不純物（エアロジェル）効果について理論・数値的に研究をする予定です。同時に、ボース系超流体とフェルミ系超流体の位相欠陥に局在した素励起に関して、普遍的な物理を探求したいと思います。
その他
物理学者に将来なりたいと思い始めたのは、私が中学生の頃です。きっかけになったのは技術・家庭科の蛍光灯作成の授業で初めて電子の存在を知ったときでした。今まで何気なく考えていた身近な電気の本当の正体に大きな衝撃を受け、感動で鳥肌が立ったことを今でも覚えています。物理の勉強や研究をしていると、時々そんな「鳥肌」に出くわすため、物理は止められません。物理学者だけでなく子供たちや一般の人たちとも「鳥肌」を共有できるような物理学者を目指し、日々精進していきたいと考えています。
液体ヘリウムの分野は物性物理分野の中でも最も基礎的分野の一つであり、以前から魅力に感じていました。
本学術領域をきっかけにこの分野に参入できたことを大変うれしく思います。また、本学術領域の会議や研究会を通して、他分野の人と積極的に交流を持ち、研究者としての知識の幅をより一層広げていきたいと思います。
略歴
- 2005年
- 大阪市立大学 理学部物理学科 卒業
- 2007年
- 日本学術振興会 特別研究員 DC1
- 2010年
- 大阪市立大学 大学院理学研究科 後記博士課程修了 博士（理学）
- 2010年
- 大阪市立大学 理学部物理学科 特任助教
- 2011年
- 広島大学 大学院総合科学研究科 研究員
- 2013年
- 大阪市立大学 理学部物理学科 講師、現在に至る
代表論文
"Crossover between Kelvin-Helmholtz and counter-superflow instabilities in two-component Bose-Einstein condensates",
Naoya Suzuki, Hiromitsu Takeuchi, Kenichi Kasamatsu, Makoto Tsubota, and Hiroki Saito,
Physical Review A 82, 063604(2010).
"Binary quantum turbulence arising from counter-superflow instability in two-component Bose-Einstein condensates",
Hiromitsu Takeuchi, Shungo Ishino, Makoto Tsubota,
Physical Review Letters 105, 205301(2010).
"Analogues of D-branes in Bose-Einstein condensates",
Kenichi Kasamatsu, Hiromitsu Takeuchi, Muneto Nitta, and Makoto Tsubota,
Journal of High Energy Physics 11, 068(2010).
"Quantum Kelvin-Helmholtz Instability in phase-separated two-component Bose-Einstein condensates",
Hiromitsu Takeuchi, Naoya Suzuki, Kenichi Kasamatsu, Hiroki Saito, and Makoto Tsubota,
Physical Review B 81, 094517(2010).
"Spontaneous radiation and amplification of Kelvin waves on quantized vortices in Bose-Einstein condensates",
Hiromitsu Takeuchi, Kenichi Kasamatsu, and Makoto Tsubota,
Physical Review A 79, 033619(2009).
"Boojums in Rotating Two-Component Bose-Einstein Condensates",
Hiromitsu Takeuchi and Makoto Tsubota,
Journal of the Physical Society of Japan 75, 063601(2006).
