高木 丈夫 (Takeo Takagi)
- 所属：
- 福井大学(大学院工学研究科物理工学専攻)教授
- 専門分野：
- 低温物理学理論
- 研究題目：
- (B01) スピン三重項超流動体の新奇界面現象
- 領域での研究テーマ：
- 超流動3Heにおける秩序変数とNMRスペクトルの計算
- 領域での役割：
- B班分担者
■ 研究室
これまでの研究
大学院生時代から、He系のボーズ凝縮、特に超流動３Heおよび超流動４Heの秩序変数の振る舞いについて研究してきました。特に早くから知られていた、異方的超流体である３Heのテクスチャーの制御や、それを同定するための、NMR振動数の計算を行ってきました。 また、スピンの複素平面へのマッピングにより４Heの秩序変数と等価な秩序変数空間を持つ、二次元フラストレート系Isingスピンモデルを研究していた時期もあります。この時の、スピンモンテカルロ計算の経験を元に、経路積分やグリーン関数モンテカルロの計算も一通り行いました。相互作用が単純なHe系の計算にはきわめて有効です。
また近年、単純なトロッター分解（2次までの精度）を越えた4次精度以上の分解が発見され、経路積分とグリーン関数モンテカルロの精度が格段に上がりました。これらをHe系に応用することも並行して研究しています。
本領域での研究
超流動３HeのA相では、クーパー対が角運動量を持っています。この角運動量：Intrinsic Angular Momentum （IAM）が、観測に掛かるかどうか、が３Heの超流動状態が発見されてからの大きな問題です。この問題を解決する実験方法「超流動３He-A相を回転してA相のMermin-Ho構造を変調してNMR振動数の回転依存性を測定する」という方法を提案しました。上側の図が、３Heの入っている容器中に出現するNMRのスピン波の波動関数です。また、下側の図が容器の回転角速度を横軸に、NMRのシフト量を縦軸に示したものです。IAMが観測に掛かる場合（with IAM）と掛からない場合（no IAM）では、定性的に異なる振る舞いをすることが判ります。現在、東大物性研で実験が続けられていますすが、クーパー対の全モーメントが観測される、という状況が有力なようです。３Heの他にも、超伝導物質でもクーパー対の角運動量が陽に出現すると思われる物質が見つかっていますので、３Heと併せて、研究の発展が期待されます。
その他
中高校生に対して、大学の体験授業等をすることが多いです。そこで気付くことは、電磁石を巻いた経験はおろか、砂鉄さえ集めたことがない生徒が半分以上いることです。研究の最前線の話題を話すことの他にも、日常的な物理の感覚も与えるように留意しています。
略歴
- 1981年
- 東北大学理学部物理工学科 卒業
- 1983年
- 東北大学大学院理学研究科博士前期課程 修了
- 1985年
- 名古屋大学大学院理学研究科博士前期課程 修了
- 1988年
- 名古屋大学大学院理学研究科博士後期課程 修了（理学博士）
- 1988年
- 名古屋大学理学部研究生
- 1988年
- 名古屋大学理学部助手
- 1989年
- 福井大学工学部講師
- 1997年
- 福井大学工学部助教授
- 2007年
- 福井大学工学部准教授
- 2008年
- 福井大学工学部教授、現在に至る
代表論文
"Path Integral Calculation of 4He in Quasi-one-dimensional Channels",
H. Kiriyama, J. Taniguchi, M. Suzuki, T. Takagi,
J. Low Temp. Phys. 162, 597-602(2011)
"Spin Wave and Vortex Excitations of Superfluid 3He-A in Parallel-Plate Geometry",
M. Yamashita, K. Izumina, A. Matsubara, Y. Sasaki, O. Ishikawa, T. Takagi, M. Kubota, T. Mizusaki,
Phys. Rev. Lett. 101, 025302 (2008)
"Path Integral Calculation of 4He in Zero-Dimensional Nanocage Model",
Y. Nakamura, T. Takagi,
J. Phys. Soc. Jpn. 77, 03608-03614(2008)
"Vortex Formation and Annihilation in Three Textures of Rotating Superfluid 3He-A",
R.Ishiguro, O.Ishikawa, M.Yamashita, Y.Sasaki, K.Fukuda, M.Kubota, H.Ishimoto, R.E.Packard, T. Takagi, T.Ohmi, T.Mizusaki,
Phys. Rev. Lett. 93, 125301 (2004)
"New Partially Disordered Phases with Commensurate Spin Density Wave in Frustrated Triangular Lattice",
T. Takagi and M. Mekata,
J. Phys. Soc. Jpn. 64, 4609 -4627 (1995)
