これまでの研究

　これまで凝縮系物理学の中で、特に強相関系の理論研究を行ってきました。低次元量子系の厳密解、場の理論的アプローチなどの数理的なものから、重い電子系、量子スピン系などの強相関電子系、さらには量子ドットや冷却原子系などの人工量子系に関する研究を手掛けてきました。中でも、１次元量子系に現れる準粒子の研究には特に愛着を持っています。この準粒子は低次元量子ゆらぎに起因するものであり、なかなかエキゾチックなものです。現在は、トポロジカル物質に現れる、もっとエキゾチックな準粒子に魅了され研究を行っています。

本領域での研究

　新学術領域では、計画班D01の代表者としてトポロジカル物質への相関効果を中心に研究を行います。私自身は、この分野への比較的新しい参入者でありますが、これまでの強相関電子系での経験を生かして、トポロジーと強相関の絡み合いによる新奇な量子現象の研究を行います。計画研究D01内の連携研究を活性化するとともに、公募班を含む領域全体の連携・融合を推進する横糸の役割を担いたいと思います。個人の研究としては、特にA01の強相関電子系のワイル半金属やスピン液体の研究と緊密な連携を取りたいと思います。

　凝縮系の量子現象には、日々、心ときめく新鮮な発見があり、この分野の深さと広がりをしみじみ感じています。トポロジカル物質科学という切り口で、凝縮系の量子現象の面白さを、広く社会に伝えたいと思っています。

略歴

1980年

大阪大学工学部 応用物理学科 卒業

1984年

大阪大学大学院工学研究科 応用物理学専攻 博士後期課程退学

1984年

大阪大学工学部 応用物理学科 助手

1989年

京都大学 基礎物理学研究所 助教授

1995年

大阪大学大学院工学研究科 応用物理学専攻 教授

2007年

京都大学大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 教授、現在に至る

主な受賞

1992年

日本IBM科学賞

1995年

仁科記念賞

代表論文

"Characterization of a topological Mott insulator in one dimension"
T. Yoshida, R. Peters, S. Fujimoto and N. Kawakami,
Phys. Rev. Lett. 112, 196404-1-5 (May. 2014).
DOI: http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.112.196404

"Quantum Phase Transitions in the Hubbard Model on Triangular Lattice"
T. Yoshioka, A. Koga, and N. Kawakami,
Phys. Rev. Lett. 103, 036401-1-4 (Jul. 2009).
DOI: http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.103.036401

"Orbital-selective Mott transitions in the degenerate Hubbard model"
A. Koga, N. Kawakami, T. M. Rice and M. Sigrist,
Phys. Rev. Lett. 92, 216402-1-4 (May. 2004).
DOI: http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.92.216402

"Quantum Phase Transitions in the Shastry-Sutherland Model for SrCu₂ (BO3)₂"
A. Koga and N. Kawakami,
Phys. Rev. Lett. 84, 4461-4464 (May. 2000).
DOI: 10.1103/PhysRevLett.84.4461

"Luttinger Anomaly Exponent of the Momentum Distribution in the Hubbard Chain"
N. Kawakami and S.- K. Yang,
Phys. Lett. A 148, 359-362 (Aug. 1990).
DOI: 10.1016/0375-9601(90)90818-9

"Exact Expression of the Ground State Energy for the Symmetric Anderson Model"
N. Kawakami and A. Okiji,
Phys. Lett. A 86, 483-486 (Dec. 1981).
DOI: 10.1016/0375-9601(81)90663-0