松野 丈夫 (Jobu Matsuno)
- 所属：
- 理化学研究所（創発物性科学研究センター） 専任研究員
- 研究題目：
- 超格子バンドエンジニアリングを用いたトポロジカル絶縁体の実現
- 領域での役割：
- C01班公募研究代表者
■ 研究室 ■新学術研究紹介
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これまでの研究
界面におけるエピタキシャル安定化を用いた薄膜新物質開発に取り組んできました。薄膜は単結晶基板からのエピタキシャル歪を感じますので、熱力学的に平衡であるバルク物質では実現できないような結晶構造を作り込むことが可能です。これまでにK2NiF4型強磁性体Sr2CoO4やAサイト欠損スピネルIr2O4などの新物質を合成してきました。物質開発に加え、スペクトロスコピー（放射光も利用しています）、デバイス作製を通した物性評価も行っています。
本領域での研究
イリジウム酸化物におけるトポロジカル絶縁体の物質開発に取り組んでいます。イリジウム酸化物のような5d 電子系ではスピン・軌道相互作用が約0.5 eVと大きく、かつ電子相関とも競合するという特徴があります。このことから、電子相関の効いたトポロジカル絶縁体という物質の新たな状態が生まれる可能性が理論的に指摘されています。前期ではイリジウム酸化物SrIrO3とチタン酸化物SrTiO3を交互に積層した人工超格子を作製し、SrIrO3の層数mを変化させることで物性の制御に成功しました（右図）。これは人工超格子によるバンド構造制御、すなわち超格子バンドエンジニアリングの好例であり、薄膜合成によってのみ得られる成果です。後期は超格子バンドエンジニアリングを駆使した物質開発を行い、トポロジーと電子相関との協奏を実現します。
その他
遷移金属化合物の光電子分光に関する研究で学位をとりましたので、物質の電子構造を念頭においたものづくりを心掛けています。本研究領域ではトポロジーを核として様々な分野の方々が集まっており、皆様との議論・交流が私にとって大きな刺激になっています。後期は受けた刺激を具体的な形に結実させたいと考えております。
略歴
- 1996年
- 東京大学理学部物理学科 卒業
- 2001年
- 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 博士課程修了、博士（理学）
- 2001年
- アトムテクノロジー研究体 十倉研究グループ リサーチサイエンティスト
- 2002年
- 産業技術総合研究所 強相関電子技術研究センター（CERC） 産総研特別研究員
- 2004年
- 科学技術振興機構 創造科学技術推進事業（ERATO）十倉スピン超構造プロジェクト 研究員
- 2005年
- 理化学研究所 高木磁性研究室 研究員
- 2008年
- 理化学研究所 高木磁性研究室 専任研究員
- 2013年
- 理化学研究所 石橋極微デバイス工学研究室 専任研究員、現在に至る
（理化学研究所 創発物性科学研究センター(CEMS) 兼務）
代表論文
"Momentum-resolved electronic excitations in the novel Mott insulator Sr2IrO4 studied by resonant inelastic x-ray scattering",
K. Ishii, I. Jarrige, M. Yoshida, K. Ikeuchi, J. Mizuki, K. Ohashi, T. Takayama,
J. Matsuno, and H. Takagi,
Physical Review B 83, 115121 (2011).
"Epitaxially stabilized iridium spinel oxide without cations in the tetrahedral site",
H. Kuriyama, J. Matsuno, S. Niitaka, M. Uchida, D. Hashizume, A. Nakao, K. Sugimoto, H. Ohsumi, M. Takata, and H. Takagi,
Applied Physics Letters 96, 182103 (2010).
"Magnetic field tuning of interface electronic properties in manganite-titanate junctions",
J. Matsuno, A. Sawa, M. Kawasaki, and Y. Tokura,
Applied Physics Letters 92, 122104 (2008).
"Variation of the electronic structure in systematically synthesized Sr2MO4 (M = Ti, V, Cr, Mn, and Co)",
J. Matsuno, Y. Okimoto, M. Kawasaki, and Y. Tokura,
Physical Review Letters 95, 176404 (2005).
"Metallic ferromagnet with square-lattice CoO2 sheets",
J. Matsuno, Y. Okimoto, Z. Fang, X. Z. Yu, Y. Matsui, N. Nagaosa, M. Kawasaki, and Y. Tokura,
Physical Review Letters 93, 167202 (2004).
"Synthesis and electronic structure of epitaxially stabilized Sr2-xLaxVO4 (0 <= x <= 1) thin films",
J. Matsuno, Y. Okimoto, M. Kawasaki, and Y. Tokura,
Applied Physics Letters 82, 194 (2003).
