メンバー

メンバープロフィール

チャオジン・リン (林 朝鏡 / Chaojing Lin)

チャオジン・リン (林 朝鏡 / Chaojing Lin)

東京工業大学(理学院 物理学系)ポスドク研究員

受入研究者 :
C01 藤澤 利正
在任期間 :
2016年10月1日 ~ (計画研究 PD)

E-mail : lin.c.ad[at]m.titech.ac.jp

本領域での研究

 GaAs/AlGaAsヘテロ構造中の高移動度二次元電子ガスに強磁場を印加することによって実現される分数量子ホール(FQH)効果は、強い電子電子相互作用に起因したトポロジカル状態として約30年にわたって研究されてきたものの、十分な理解に至っていない部分もあり、凝縮物物理学における新しい概念や興味深い現象への貢献がなされれている研究分野です。

 例えば、ニュートラルモードと名付けられたエネルギーを運搬するだけで、正味の電荷を持たない新しいタイプの低エネルギー集合励起は、従来の輸送測定では観測することができず、最近になってようやくショットノイズ測定[1]によってFQHエッジ状態で明らかにされました。しかしながら、ニュートラルモードに対する測定法は確立されておらず、分散関係や動的応答のような基本的な性質はほとんど知られていません。

 私の研究では、東京工業大学の藤澤研究室における整数量子ホールエッジ状態の研究[2]において開発された高周波技術である電気ポンププローブ法を拡張することにより、FQH領域におけるニュートラルモードの特性を明らかにすることを目指しています。

 ニュートラルモードは、相互作用および不純物ポテンシャルによるエッジ状態の再構成による結果であると考えられており、これらの実験研究によって、FQHエッジ構造の理解が進むとともに、相互作用に起因したトポロジカル状態について新しい光を当てるものであると考えています。

 このFQH効果に関する研究は、私がPh.Dの研究で行ってきたトポロジカル系の研究を発展するものであります。すでに本研究プロジェクトに入って研究を楽しんでいるところであり、このような機会を与えて頂いた藤澤教授(東京工業大学)に感謝します。

[1] A. Bid et al., Nature 466, 585 (2010).
[2] H. Kamata et al., Nature Nanotech. 9, 177 (2014).

略歴

2016年
中国科学アカデミー物理学研究所 博士号 取得
2016年
東京工業大学(理学院 物理学系)ポスドク研究員、現在に至る

代表論文

"Generation and detection of edge magnetoplasmons in a quantum Hall system using a photoconductive switch"
C. J. Lin, K. Morita, K. Muraki, and T. Fujisawa,
Japanese Journal of Applied Physics 57, 04FK02-1-4 (Feb. 2018).
https://doi.org/10.7567/JJAP.57.04FK02

"Spin fluctuations and colossal magnetoresistance in HgCr2Se4"
C. J. Lin, C. J. Yi, Y. G. Shi, L. Zhang, G. M. Zhang, J. Muller, Y. Q. Li,
Physical Review B 94, 224404-1-11 (Dec. 2016).
DOI: 10.1103/PhysRevB.94.224404

"Parallel field magnetoresistance in topological insulator thin films"
C. J. Lin, X. Y. He, J. Liao, X. X. Wang, V. Sacksteder IV, W. M. Yang, T. Guan, Q. M. Zhang, L. Gu, G. Y. Zhang, C. G. Zeng, X. Dai, K. H. Wu, Y. Q. Li,
Physical Review B 88, 041307(R)-1-6 (Jul. 2013).
DOI: 10.1103/PhysRevB.88.041307