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小沼のカナダ出張報告

修士2年の小沼です。2006年5月CIARに出席するため約一週間、カナダのモントリオールに出張しました。 これはその報告です。

CIARとは?

CIARとはThe Canadian Institute for Advanced Researchの略で、 カナダ国内の基礎研究の促進を目的とした組織です (日本でいう"科研費特定領域"のようなもの(?))。 CIARには 物理・生物から社会科学にいたるまで様々な研究領域が含まれているようですが、 その中の一つに"Quantum Materials"という固体物理学の研究領域があり、 前野教授がそのメンバーとして所属しています。 CIARの"Quantum Materials"は毎年5月ころに研究報告会 (学生向けのsummer school約3日間+本会議約3日間)を開いており、 会議のメンバーは学生1~2名を連れて行くことが出来ます。 この研究報告会は毎年、モントリオール・トロント・バンクーバーのいずれかの都市で開かれているようです。 例えば、一昨年(2004年)はトロント、去年(2005年)はバンクーバーで開催され、うちの研究室から 学生2名ずつが参加してきました。 今年(2006年)はモントリオールでの開催で、 ぼくがそこに行くことになり、summer schoolと本会議に出席して、NiGa2S4というフラストレーション系物質の単結晶 の物性に関するposter発表をしてきました。

滞在中の日程

出張の日程はこんな感じでした。

5/ 7 (日) 関西国際空港発(13:00)→モントリオール空港着(15:00)

5/ 8 (月)- 5/10 (水) summer school @McGill大学 (主に講義、火曜にposter発表、水曜夜に打ち上げ食事会)

5/ 11 (木)- 5/13 (土) 本会議 @Delta Hotel (会議メンバーによるoral発表がメイン、午後は毎日poster発表、木曜夜に食事会)

5/14 (日) モントリオール空港発(13:00)→関西国際空港空港着(翌18:00)

飛行機
飛行機は人生で2度目でした。窓側に初めて座ってちょっと感動!
街
大学の近くの通り。モントリオールいいです。もっと散策したかった。
部屋
宿舎の部屋。何もありませんが、きれいな部屋でした。

学生はMcGill大学の宿舎に泊まり、先生方はDelta Hotelに泊まっていました。 summer schoolでは学生向けの講義、本会議ではメンバーによるoral発表とdiscussionがありました。 summer schoolでは火曜日の午後に、本会議では毎日午後にposter発表の時間があり、ぼくもそこで発表してきました。

CIAR summer school

モントリオールに到着してすぐ、welcomeバーベキューがあったのですが、知り合いが一人もおらず、最初人に話しかけるのに 少し勇気がいりました。summer schoolに出席していた学生(60人くらい?)のほとんどがカナダ国内の 大学の所属で、カナダ国内以外の大学から来ていた人はほとんどいなかったことにも初め少し戸惑いました (カナダ以外の大学から来ていたのは、ぼくともう一人アメリカのStanford大から来ていた人くらいだったと思います)。 ですが、話しかけるとみんなけっこう仲良くしてくれて、ご飯の時間などを通して少しずつ知り合いが増えていきました。 「Yoshi Maenoの学生です」と自己紹介するとほとんどの人がわかってくれてました。 話をしてみると、他の国の出身でカナダの大学への留学生だという人がけっこういたようです。 一番感心したことは、多分国柄だと思いますが、カナダの人は 相手の英語が下手でも全然気にしないことです。 カナダ人であっても移民の二世か三世の場合がほとんどのようで、 「もとから英語を喋れるわけではない外国人」がmajorityの国だからこそこういう 雰囲気なんだと思います。 実際、普段英語で話すけれど家では母国語、という人に何人も会いました。 そういうようなことを考え始めてからは、気楽に人に話しかけられるようになりました。

到着した次の日から講義が始まりました。 英語もわからない上に量子ホール効果・量子光学などのあまりなじみのない分野の講義も含まれていて、 正直、始めはちょっときつかいな、と思いました。 ですが、スピン系や高温超伝導などの聞いたことのある話だと英語が 完全に聞き取れなくてもなんとなくわかるもので、 あまり日本で聞けないような観点からの話もあり、けっこう面白く聞けました。

講義室
講義の部屋。講義はMcGill大学内の建物で行われました。

summer schoolが始まって二日目、poster発表がありました。 手ごたえはまあまあでした。 聞きに来てくれた人は5,6人で、英語で説明するのはやっぱり難しかったです。 本会議でもposterがあるのでそっちでも頑張ろうと思いました。

三日目、J. Berlinskyさんという理論の先生がフラストレーションの講義をしました。自分の研究に関連した分野なので、 講義のあと質問しに行きました。かなり緊張しましたが、その時に頑張って自分の研究とposterの宣伝をしておきました。

この日でsummer schoolは終了し、夜はレストランで食事会(打ち上げ?)をしました。 学生の顔見知りがけっこうできていたので、この頃にははじめの不安もなくなってきて、楽しくなっていました。 このあと帰る日までの間に、仲良くなった人に市内を車で案内してもらったり、バーに連れて行ってもらったりしました。

poster
ポスター会場はこんな感じでした。

CIAR本会議

四日目から本会議です。発表者は教授レベルの人がほとんどで、この日から偉い人がたくさん出席します。 summer schoolに参加した学生もこの会議に出席することができます。前野さんはこの日から来ていました。 有名な人ばかりだったようですがぼくは全然知らない人ばかりだったので、 隣に座らせてもらって前野さんから色々と教えてもらいました。 この会議にはSr2RuO4関係の共同研究者がかなりいるとのことでした。 この日何よりびっくりしたのは、ぼくたちの目の前に座っていた人があのP. W. Andersonだ、というのを聞いたときです。

この日もう一つ驚いたことがありました。summer schoolでも講義をしていた理論家のJ. Berlinskyさんが、oral発表で、ぼくの研究している物質とposterの宣伝をしてくれたことです。 これはかなり嬉しかったです。おかげで午後のposterでは多くの方が見に来てくれて、次の日以降もずっと盛況でした (summer schoolで売り込んでおいた甲斐がありました)。 CIARではフラストレーションに関しては、活発に議論されていましたが、理論が中心で実験の人はあまり多くなかったようです。 そのためぼくposterに興味を持ってくれた人が多かったのだと思います。共同研究をもちかけて来る人もいて、手ごたえを感じました。

oral sessionも興味深いものが多かったです。特に"スピン液体"に関する理論で、日本ではあまり聞かないようなexoticなものが多くて驚いたことや、 "optical lattice"(レーザーで作ったポテンシャルに原子をトラップしたもの)で本当に固体物性の シュミレーションはできるのか?ということが激しく議論されていたことなどが特に印象に残っています。 本会議全体にいえることですが、発表中でもばんばん質問が飛び交っている雰囲気が新鮮でした。

ところで本会議中の昼食は全てホテルのバイキングでしたが、これがほんとにおいしかったです! 毎日お昼が楽しみで仕方ありませんでした。(写真を撮って来れば良かったです。)一週間で少し太りました。

街2
モントリオールの夜景。

そんな感じであっという間に一週間が過ぎて、日曜のお昼にモントリオールを去りました。 (前野さんはこのあとアメリカに行ったため、結局行き帰りとも一人でした。) カナダでのNiGa2S4の知名度は上がったはずだという自信はあります(多分)。 勉強にもなったし、楽しかったし、非常に充実した一週間でした。

終わりに

海外に行くことにも慣れておらず、一人ということもあって行く前はかなり不安でした。 いざ行ってみるとやはり色々と苦労(主に言葉の面で)したこともありましたが、 初めてのことばかりで良い経験になったし、何より楽しかったです。 外国の同年代の人と話せたことも自分にとって財産になったと思います。 モントリオールにもまた機会があればぜひ行ってみたいです。