Cd2Re2O7の超伝導対称性が圧力でs波からp波へ

Cd2Re2O7は室温では立方晶パイロクロア構造を持っていますが、低温で正方晶になり空間反転対称性が破れます。この低温構造は圧力で大きく変化し、圧力下では多彩な相図を示す。これまでの研究から4.2万気圧を境に低圧では空間反転対称性が破れてる、高圧では破れてない構造をとることが知られている。

超伝導に関していうと、常圧ではs波であることが実験的に確かめられているが圧力を加えると4万気圧付近でH<sub>c2</sub>が常圧の約30倍になることが報告されており、最近の理論研究と合わせて圧力下では空間反転対称性を破るゆらぎを使ったスピン三重項超伝導状態が実現していると考えられている。

本研究では核スピン格子緩和率の温度依存性の圧力変化を測定し、低圧では見えていたコヒーレンスピークが3万気圧以上で消失することから高圧下では超伝導の対称性が変化していることを報告した。

本研究は東京大学物性研、岡山大学との共同研究です。この結果はJournal of Physical Society of JapanにLetterとして掲載されています。preprintはこちら。動画での解説はこちら

核スピン格子緩和率の温度依存性の圧力変化。シミュレーションも載せてある。
(インセット)2.5K(通常状態)の1/T1Tの圧力依存性

論文情報

Kitagawa, S; Ishida, K; Kobayashi, T C; Matsubayashi, Y; Hirai, D; Hiroi, Z

Variation in Superconducting Symmetry Against Pressure on Noncentrosymmetric Superconductor Cd2Re2O7 Revealed by 185/187Re Nuclear Quadrupole Resonance Journal Article

In: Journal of the Physical Society of Japan, vol. 89, no. 5, pp. 053701, 2020.

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