CaSb2における超伝導の発見

CaSb2では、カルシウム原子とアンチモン原子が「非共型」という特別な配置で並んでいます。 結晶中では原子は周期的に並んでいるため、ある原子が隣の原子と重なるように全体を平行移動すれば、他の原子も隣の原子と重なり、 結果的に元の構造と同じになります。 CaSb2ではこの「並進対称性」に加えて、隣の原子に向かって半分だけ平行移動し、 さらにその方向周りに180度回転させると元の構造と重なるという「らせん対称性」も持っています。 らせん対称性のように「中途半端な平行移動」を含む手続きで元の構造に戻る構造は「非共型」と呼ばれます。 CaSb2では非共型な結晶構造に起因して、波数空間上で電子状態の4重縮退が線状に連なっていると考えられています。 このように線状の縮退を持つ物質では、縮退がない物質では見られない新しい性質が予言されています。

我々は非共型な構造を持つ物質であるCaSb2が超伝導を示すことを発見しました。 図に示すように、電気抵抗と磁化率の温度依存性において、超伝導の特徴であるゼロ抵抗とマイスナー効果が観測されました。 理論的な可能性として、電子状態が持つ線状の縮退に由来する非従来型の超伝導が起きているかもしれません。 非共型の結晶構造が超伝導とどのように関係するのか、理論・実験両面からのこれからの研究が待たれます。

本研究は京都大学基礎物理学研究所の佐藤教授のグループとの共同研究です。 論文はオープンアクセスなので、下のリンクからどなたでも無料でご覧いただけます。

CaSb2の電気抵抗率(上)と磁化率(下)の温度依存性。 磁場をかけない状態では1.8 K以下で電気抵抗率が減少し始め、1.2 K以下でゼロになっている。 磁化率の測定でも1.8 K以下で強い反磁性(マイスナー効果)を示している。

論文情報

Ikeda, A; Kawaguchi, M; Koibuchi, S; Hashimoto, T; Kawakami, T; Yonezawa, S; Sato, M; Maeno, Y

Superconductivity in the nonsymmorphic line-nodal compound CaSb2 Journal Article

In: Physical Review Materials, vol. 4, no. 4, pp. 041801(R), 2020.

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