プラチナナノ粒子における量子サイズ効果をNMRで観測

粒子の直径をナノメートルサイズまで小さくしたナノ粒子では、エネルギーが連続的に存在するバルク物質と違い、エネルギー準位が離散的になることが理論的に予言されています。この効果は量子サイズ効果もしくは提案者の久保亮五先生の名前をとって久保効果と呼ばれています。量子サイズ効果によって様々な物性の変化が期待されることから長年研究されていますが、表面効果との区別や測定手段が限られることからいまだ実験的な証明がなされていませんでした。

今回、我々は様々な粒径のプラチナナノ粒子に対してNMR測定を行うことで、核-スピン格子緩和率1/T1が通常金属で期待される温度に比例する振る舞いから外れて低温でピークを持つこと(図)、温度に比例する振る舞いは粒径を変えると単調に変化すること(図のインセット)を明らかにしました。この振る舞いは表面、内部共通のふるまいであることから表面効果でなく、量子サイズ効果であることがわかります。我々の成果はナノ粒子における量子サイズ効果を初めて系統的に実証したといえます。

本研究は京都大学北川宏教授の研究室との共同研究です。この結果はPhysical Review BにRapid Communicationとして掲載されています。preprintはこちら。動画での解説はこちら

様々な粒径のナノ粒子の核スピン格子緩和率の温度依存性(インセットは温度に比例する振る舞いから外れる温度の粒径の逆数依存性。理論的に予測される離散化したエネルギーのギャップの大きさも同時にプロットしている)

論文情報

Okuno, T; Manago, M; Kitagawa, S; Ishida, K; Kusada, K; Kitagawa, H

NMR-based gap behavior related to the quantum size effect Journal Article

In: Physical Review B, vol. 101, no. 12, 2020.

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