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ドイツ・ブラウンシュバイクで9月7日から13日に行われたHighly Frustrated Magnetism 2008 (HFM2008)に参加しました。この場を使って、フラストレート磁性研究の国際会議の様子やドイツ出張で起きた出来事を報告したいと思います。
HFMは、その名のとおり『(非常に)フラストレートした磁性体』に焦点を当てた国際的な研究会です。現在は2年に1度のペースで開かれているようで、今年は、ドイツ・ブラウンシュバイクで行われました。
今回は、初の海外ひとり旅でしたので、「海外の研究者やドイツの現地の人たちとコミュニケーションできるのか」、「発表はうまくできるのか」、「やはりビールはおいしいのかな」など期待半分不安半分な気持ちいっぱいで参加しました。
会議は、世界各地からおよそ200人の研究者が集まって行われました。ほぼ同時期に開催されたLTの参加人数(2000人)に比べると若干少ない印象を受けましたが、話を聞くと4年前のHFMの参加者は約100人だったそうなので、フラストレート磁性の研究が、ここ数年で盛んに行われるようになってきているのだなあと感じました。
会議の議題には、カゴメ格子や三角格子磁性体でのスピン液体状態をはじめパイロクロア格子磁性体のアイス状態などフラストレート磁性体のスピンの基底状態について、理論・実験の両面から多くの研究成果が取り上げられていました。 また、最近、発見されはじめているフラストレート磁性体で実現するマルチフェロイック性や異常ホール効果にも焦点が当てられていました。そこでは、「カイラリティ」という新たな自由度(スピンの幾何学的配置がこの自由度を生み出す)が物性に関係することが議論されていました。幾何学的フラストレーションの影響がスピン系以外の性質にも現れてくる可能性があるという研究内容には非常に興味が沸きました。
ポスター発表の良いところは、気軽に質問し易いところだと思います。その点を心がけて、自ら積極的に聞きに行くようにしました。英語という壁は少しはあったのですが、相手が言っていることが分からない場合には、もう一度聞き返すことなど自らコミュニケーションをとることによって深く議論することができたと思います。周りの発表や自分の発表を通して分かったことは、幾何学的にフラストレートした磁性体で且つ導電性を有する物質は非常にめずらしのではないかということです。これは、今後研究をしていく上で、売りになるなあと思いました。また、良かったことは、自分の論文をポスターパネルの脇に、自由に持っていけるようにしていたところ、発表が終わるころには全てなくなっていたことです。しかし、英語での発表は、正直ドキドキしました。
今回、初めての海外での国際学会ではありましたが、英語でのコミュニケーションにも臆することなく、積極的に行動していくことが活路を見い出すきっかけになることがあると学びました。(ちなみに、ブラウンシュバイクの町では英語がほとんど通じなかったのですが、なんとか身振り手振りとニュアンスでコミュニケーション取れましたから。。。) 加えて、フラストレート磁性に焦点を当てたこのような会議に出席することで、近年のフラストレーション磁性体研究の最前線を肌で感じることができた点は今後の研究活動に指針を与える非常に有益な体験であったなあと思います。
会議が終わってバンケットまでは、少し時間があったので、東中さんと一緒に、ブラウンシュバイクの町をぶらぶらと歩きながら会場に向かうことにしました。街には、古い建物が立ち並んでおり、広場には、子供などが集まって遊んでいました。なんとなく平和な空気を感じました。
街を歩いてみて気づいたのは、電線などが無いということです。日本では当たり前のようにある電柱や電線が全然無いことには驚きました。東中さん曰く、「ヨーロッパは景観を大切にしている」そうです。しかし、建物大きいですね。
バンケットは、上の写真の建物の右側の建物で行われました。どうやら、通常は何らかの博物館らしく、会場の中に入ると大きな町の模型がありました。(もしかしたら、違うかも。。。) 会食会場は、建物の2階で、ちょっと煌びやかな感じがしました。
まあ、食事のことは置いておいて、バンケットではポスターや会議中にあまり話せなかった研究者の方と話すことができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。お酒の力もあったのかもしれませんが、英語での会話が弾んだことには少し、自信というか、やる気というかが沸いてくる思いでした。
そんなこんなで、海外の研究者の方とも十二分にコミュニケーションできたり、食事もおいしかったりでバンケットは、非常に楽しかったです。あまり知り合いがいなかったことが逆に幸いしたのかなあとも思います。また、このようなバンケットに参加したいと思いました。
ところで、この楽しいバンケットの後、僕と東中さんはどうなったかといいますと、ホテルとは正反対のトラム(ドイツの路面電車)に乗ってしまい、途方もないところまで行ってしまいました。酔っていたせいもあり、全然気づかずに1時間ほど乗っていました。おかしいなあ、もう着くはずなんだけどなあと良く見てみたら。。。恐ろしかったです。 帰りの便もほとんど無くなってしまった状態だし、夜は寒いしで、最後の最後で散々な思いでした。。。
いろいろとありましたが、結果的にみて、この海外出張で多くの良い体験ができたと思います。ここでは書ききれないほどのおかしな体験もしたのですが、(例えば、トラムでは結構、無賃乗車が行われているのですが、ちょうどその取締りの覆面警官に出合ったり。。。) それも人間的に強くなるきっかけになったように思います。物理の発表ももちろんなのですが、なれない海外で、なんとかやっていくということは、普段の生活で味わえないような突破力みたいなもの(考えてなんとかやりぬくような力)を身につけることにもつながるのかなと思いました。(終)