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UCoGeにおける強磁性縦揺らぎが誘起する超伝導

 磁石は超伝導になり得るのかという問題は半世紀に渡り超伝導研究における課題の1つでした。超伝導が持つ、磁束を排除するマイスナー効果は磁石とは一見相容れないと思われます。しかし磁石でありながら超伝導になる物質も実験的には発見されており、両者はどのように共存しているのか、なぜそのような超伝導が生じるのかなどが研究の対象になっていました。

我々はそのような強磁性超伝導体の1つ、UCoGe[1]の研究を行っています。UCoGeは強磁性超伝導体の中では最高温であるT = 0.8 Kで超伝導になるため、強磁性と超伝導の関係性を調べる絶好の物質です。これまでに、核磁気共鳴法、核四重極共鳴法を用いた研究から磁石と超伝導が同じ場所でミクロに見ても共存していることを明らかにしていました[2]。また、UCoGeの特徴として、磁石も超伝導もどちらの性質も非常に異方的であることが知られており、超伝導発現機構との関係が期待されています。

今回はこの異方的な性質に着目して研究を進め、この磁石と共存する特殊な超伝導を形成しているのは、磁石になろうとする性質(強磁性磁気揺らぎ)そのものであることを明らかにしました。すなわち、UCoGeは磁石であるが故に超伝導になっていることを示しました。これは、外部から特定方向に磁場をかけると強磁性磁気揺らぎが非常に強く抑制され、揺らぎの抑制と同時に超伝導が消失したことによります(図1.a)。京都大学、多田靖啓氏、藤本聡氏との共同研究により、実験結果を理論的に再現する事にも成功しました(図1.b)。強磁性磁気揺らぎと超伝導の関係性は、理論的に示唆されていたものですが、実験的に明確に示した例は本研究が初めてになります。

2012年2月のTopicsの図1
図1 : (a)UCoGeにおける磁化容易軸(c軸)方向磁気揺らぎ((δHc)2)と超伝導の上部臨界磁場(Hc2)のHc = H || c 依存性。 (b)上部臨界磁場のac面内角度依存性。実線が理論計算。青は青木大氏らによる先行実験の結果を引用しています[3]。

この結果はPhysical Review Letters誌に掲載されました。本論文は、Editor's Suggestion並びに、Viewpoint in Physicsに選ばれ、紹介記事を頂いています。

 

[1] N. T. Huy et al., Phys. Rev. Lett. 99, 067006 (2007).

[2] T. Ohta et al., J. Phys. Soc. Jpn. 79, 023707 (2010).

[3] D. Aoki et al., J. Phys. Soc. Jpn. 78, 113709 (2009).

論文情報

Taisuke Hattori, Yoshihiko Ihara, Yusuke Nakai, Kenji Ishida, Yasuhiro Tada, Satoshi Fujimoto, Norio Kawakami, Eisuke Osaki, Kazuhiko Deguchi, Noriaki K. Sato, and Isamu Satoh
Phys. Rev. Lett. 108 066403 Feb. 2012