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高磁場下測定

はじめに

超伝導や磁性体は磁場をかけることで性質が変わるため、磁場中の測定は重要です。また、単結晶であれば、磁場方向による反応の違いにも興味が持たれます。NMR測定においては高磁場のほうが信号強度が大きいので、弱い信号を測定する場合は高い磁場が望まれます。

超伝導磁石

大きな磁場を実現するために、多くの場合は超伝導磁石(超伝導線材からなる電磁石)が用いられます。超伝導体は電気抵抗がゼロとなる性質を持つので、ジュール発熱がなく、大きな電流を流すことができます。以下で紹介する当研究室の磁石もほとんどの超伝導磁石です。そのため、磁石は低温装置の中に埋め込まれて、液体4Heなどで冷却されています。当研究室では最高で16 T(液体4Heを減圧して冷やせば18 T)まで磁場をかけることができます。

一部の超伝導磁石には永久電流モードがあります。すなわち、超伝導体は理想的には電流の減衰がないので、外部から電流を印加しなくても永久電流ループを作れば磁場を維持することができます。こうすることで超伝導磁石と電源をつなぐリード線部分の発熱がなくなり、低温環境への負荷が小さくなります。

様々な種類の磁石

測定する対象に応じて、様々な種類の高磁場磁石が用いられます。以下では当研究室が保有する磁石について簡単に説明します。
ベクトル磁石
ベクトル磁石は3次元ベクトル場である磁場の大きさ、向きを自在に制御できる装置です。主として(1) 3つの磁石で互いに直交するx, y, z方向に磁場をかける方式と、(2) 2つの磁石でz(鉛直)方向と水平方向に磁場をかけ,後者を回転させて3次元自由度を得る方式(下図)があります。当研究室ではこれらの方式の磁石をそれぞれ1台保有しています。
ベクトル磁石のイラスト.2つの磁石を組み合わせている.
ベクトル磁石の模式図。2つの磁石でベクトル磁場を実現する。
横磁場スプリット磁石
横磁場スプリット磁石は2つに分割した磁石を横向きにした構造を持ち、試料を回転させて磁場の角度を制御できる装置です。ベクトル磁石より角度回転の自由度が低いものの、比較的高い磁場均一度が実現できるという利点があります。
NMR用高均一度磁石
NMRで鋭い線幅を得るためには、高い空間均一度(例えば10-5/cm3)の磁場が必要です。また、磁場の時間的な減衰が小さいことも求められます。当研究室のNMR用の磁石はこのような高い均一度を持ち、かつ時間的な安定性も優れています。一部の磁石はスプリット型で、角度回転をすることができます。