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超伝導とは物質を低温まで冷却した時に電気抵抗がゼロになる現象として知られています。超伝導では、二つの電子は対状態(超伝導対)を形成し、ほとんどの場合、この二つの電子のスピンは反平行方向を向いています(スピン一重項状態という)。このため、超伝導は強い磁場の下では破壊されます。ところが最近、超伝導になることが報告されたウラン化合物UTe2では超伝導の状態は磁場に対してとても強く、驚くべきことに結晶のb軸(磁化困難軸:磁化が向きにくい方向)に15テスラ以上の磁場を印加すると転移温度が上昇するふるまいを見せます[図1(a)]。この結果からUTe2では対状態にある二つの電子スピンの向きがそろった(平行方向の)スピン三重項状態の超伝導が実現していることが期待されています。スピン三重項状態では超伝導状態でもスピン自由度が残っており、スピンは外部磁場と同じ方向をとることにより、高い磁場まで超伝導は生き残ると予想されています。その実証には超伝導状態におけるスピン状態を直接観測する必要がありましたが、スピン三重項状態の超伝導は非常に稀なため詳しい研究がありませんでした。
今回我々は、UTe2超伝導体に対し原子核レベルの微視的測定である核磁気共鳴(NMR)測定を行い、UTe2は通常金属に見られる超伝導とは異なる非従来の超伝導であること、超伝導状態のスピン磁化率の減少がスピン一重項状態で期待されるものよりはるかに小さいことを明らかにし、この物質では超伝導状態でスピンの自由度が生き残っているスピン三重項状態と考えられることを報告しました。[図1(b)] また、核スピン-格子緩和率1/T1Tの測定から二つの超伝導のギャップを示唆するデータを報告しました。[図2]
本研究は原子力機構先端基礎研究センター、東北大学金属研究所との共同研究です。この結果はJournal of the Physical Society of JapanにLetterとして掲載され、Editors' choiceに選出されました。OPEN SELECTですのでどなたでも無料で読めます。