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UCoGeは強磁性の内部で超伝導転移を示す特異な物質です。 我々のグループのこれまでの研究などから,この系ではc軸方向の大きなスピン揺らぎ(強磁性転移に近い状態)が超伝導の発現に欠かせないと考えられています。
我々はこの物質に対する詳細な59Co及び73Ge核磁気共鳴(NMR)及び核四重極共鳴(NQR)を行いました。 今までの我々のNMRでは59Co核のみが用いられてきましたが,Coは多くの系で磁性を担うので,この原子の持つ電子が59Co NMRの結果に 影響を与えている可能性が懸念されていました。 そこで非磁性元素とされるGeの同位体の1つである73Geを用いた測定を行い,本当にUの5f電子がこの系で支配的であると言えるのかを検証しました。 その結果,2つの核種を用いたNMR物理量はよく一致し(図),強磁性を担う電子がウラン(U)の5f電子であることが改めて確認されました。 さらに今回,c軸方向に比べてスピン磁化率の小さなa,b軸の間にも大きな異方性があり,後者のほうが磁化が大きいということも明らかになりました[図(a)]. このスピンの異方性は,これらの方向の磁場に対する応答の違い(例えばUCoGeにおける垂直磁場で強められる強磁性揺らぎと超伝導)に密接に関係している 可能性があることも指摘しました。
本研究は東北大学金属材料研究所との共同研究です。この結果はPhysical Review B誌に掲載されています。 preprintはこちら。