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UPd2Al3は15Kで反強磁性転移を示した後、2Kで超伝導転移を示す、反強磁性と超伝導が共存する物質です。この物質では高磁場にFFLO相と呼ばれるギャップの大きさが空間変化している超伝導状態が存在する可能性が長い間議論されてきましたが、微視的測定による証拠はありませんでした。
図は各磁場での超伝導状態(0.3K)と常伝導反強磁性状態(1.5K付近)でのNMRスペクトルです。低磁場(a)では超伝導転移に伴い、スペクトルは低周波側にシフトして広がります。これは従来のスピン一重項超伝導体の振る舞い(スピン磁化率の減少および反磁性)で説明可能です。一方、高磁場領域(c)ではシフトはほとんどなく、対称的に線幅が広がっています。従来型の超伝導では高磁場で反磁性が弱くなるために、線幅の増大は小さくなるはずですが、UPd2Al3はそうではありません。この結果はUPd2Al3の高磁場領域で磁化率が空間的に不均一であることを示しており、FFLO相が存在することと矛盾しません。
本研究は名古屋大学との共同研究です。この結果はJ. Phys. Soc. Jpn.誌に掲載されています。preprintはこちら。