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空間反転対称性の破れた5d電子系超伝導体CaMSi3(M=Ir, Pt)の静水圧を用いた研究

空間反転対称性を持たない特定の結晶構造を持つ物質では、それに伴うパリティ混合が起こります。 特に超伝導状態においては、パリティ混合は「スピン一重項-三重項混合状態」という新奇状態として理解され、従来の「スピン一重項状態」とは異なる様々な新奇現象が起こる舞台として注目されています。 本研究で用いたCaMSi3(M=Ir, Pt)はATX3型と呼ばれる結晶構造をもつ物質であり、特定の1軸方向(c軸方向)にのみ空間反転対称性が破れています。 これに伴って生じる「ラシュバ型反対称スピン軌道相互作用」は空間反転対称性の破れた場合の最も単純な例として理論面から最もよく研究されていることから、 CaMSi3(M=Ir, Pt)は理論との比較検証に最適な物質と考えられます。 本研究では多結晶CaMSi3 (M=Ir, Pt)の電気抵抗測定をピストンシリンダーを用いた静水圧下で行い、 通常状態の電気伝導の温度依存性及び超伝導特性を調べました。 その結果、この物質中では主に電子-格子相互作用が支配的であること、及び超伝導転移温度の変化は電子の状態密度の変化に追従することを示唆する結果を得ました。 これは従来のBCS理論と同様に電子-格子相互作用が超伝導状態の発現に深く関わっていることを示す結果であり、 第一原理計算により強いスピン軌道相互作用の存在が指摘されていることと合わせて考えると、空間反転対称性の破れに起因する新奇超伝導状態を調べるのに最適の環境と考えられます。 実際に、図に示すように磁場中の電気抵抗の振舞に興味深い特徴が見られ、今後の単結晶を用いた研究を含め進展が大いに期待されます。

また本研究は京都大学GCOE 双方向国際交流プログラム(BIEP)による派遣により、 本研究室の学生がオーストリア ウィーン工科大学に3ヶ月間滞在して行った研究の成果です。 研究の詳細はJournal of the Physical Society of Japan誌に掲載されています。

2012年06月のTopicsの図
図1: (a)CaIrSi3と(b)CaPtSi3の電気抵抗率の圧力・磁場中温度依存性。

論文情報

Gaku Eguchi, Friedrich Kneidinger, Leonid Salamakha, Shingo Yonezawa, Yoshiteru Maeno, and Ernst Bauer
J. Phys. Soc. Jpn. 81 074711 Jun 2012