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Sr2RuO4はその超伝導の発見から約15年が経った今でも世界中で活発な研究が行われ、 現在ではスピン三重項超伝導体であることが確実視されている。 その一方で、いくつかの未解決問題も残されている。 その1つに、磁場をab面方向に印加した際に 超伝導上部臨界磁場Hc2の上昇が低温で強く抑制される現象が挙げられる。 このHc2の抑制はスピン一重項超伝導体でしばしば観測される 常磁性対破壊効果によるパウリリミットと良く似ているが、 ナイトシフトの実験結果は常磁性対破壊効果が起きないこと(磁場方向に偏極できるスピン三重項対であること)を支持しており、 その起源は未解明のままである。 似たようなHc2の抑制は他のスピン三重項超伝導体UPt3でも観測されており、 UPt3においてもHc2の抑制の起源は明らかになっていない。 起源は異なるかもしれないが、スピン三重項超伝導が有力視されている2つの超伝導体で 共通に観測されるHc2抑制の起源は解決すべき重要な問題である。
我々はSr2RuO4でHc2の抑制が起きる条件を明確にするため、 交流磁化率をプローブとしてHc2の温度・磁場強度・磁場方位依存性を調べた。 Sr2RuO4のHc2は異方性が大きく、 僅かな磁場のズレが大きな誤差を生むため、 磁場方向を3次元的に精密制御できるベクトルマグネットを用いて、 0.1度以内の精度で磁場方向を結晶軸に合わせて正確に実験を行った。 その結果、以下のような特徴的振る舞いを見出した。
これらの特徴的振る舞いは、Hc2抑制の起源解明に向け新たな糸口となり得る重要な性質である。
この結果はPhysical Review B誌に掲載された。