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本課題演習では、固体物理学の中でも、超伝導など固体中の電子に関連した基本的物性について、実験およびセミナーを通して学びます。実際、固体の性質の多くを電子の振舞いが支配していると言っていいでしょう。固体物理学では、様々な物質が示す多彩な物理現象を研究対象としますが、これらの現象は、多数の構成粒子(例えば電子や原子)が互いに影響を及ぼしあうことによって生じます。有名な理論物理学者フィリップ・アンダーソンの言葉 More is different.
は、単純な構成要素でも多数集まって相互作用することにより、全体としては予想もつかないような劇的な振舞いを示しうることを表しており、これは、固体物理学の醍醐味と言えるでしょう。
本課題演習の実験では、実際に銅酸化物高温超伝導体を合成し、その低温での電気的・磁気的特性を測定します。セミナーは、実験と関連した内容を選んで行い、電子物性の理解を深めることを目指します。また、自分たちの行った実験を第三者に伝える手段として、レポートや口頭発表の技法も重視したいと考えています。
2020年度前期新型コロナウィルス対策のため、5/7(木)までは実験を行わず、zoomを用いたセミナーのみとします。セミナーはC. Kittel著「Introduction to Solid State Physics 8th Ed.」のChapter 10およびAppendix H、Iを基に行います。5/7(木)以降、可能なら銅酸化物高温超伝導体YBa2Cu3O7-δの合成および物性測定を行う予定です。2つのグループに分かれて実験をします。
実験室 :6号館308号室
ゼミ部屋:Zoomにて行う(予備の部屋:5号館北館255号室)
使ったプリントを以下に置いておきます(パスワードプロテクト有り・授業の際に教えます)。さらに以前のプリントはこちら。
2019年度後期はYBa2Cu3O7-δの合成を行った後、2つのグループに分かれて実験をします。1つのグループは「YBa2Cu3O7-δの酸素欠損量による結晶構造および超伝導性の変化」の実験を、もう1つのグループには「YBa2Cu3O7-δの元素置換による結晶構造および超伝導性の変化」の実験をしてもらう予定です。セミナーはC. Kittel著「Introduction to Solid State Physics 8th Ed.」のChapter 10を基に行います。
実験室 :6号館308号室
ゼミ部屋:5号館138号室
使ったプリントを以下に置いておきます(パスワードプロテクト有り・授業の際に教えます)。さらに以前のプリントはこちら。
超伝導・磁性、特に以下のトピックを中心にして行います。
セミナー等で用いる資料・文献などは、随時配布・指定します。 過去に用いたものを幾つか挙げておくと
などがあります。
2グループに分かれて、物質合成とその低温での物性測定(電気抵抗と磁化測定)などを行います(テーマは毎年変わる可能性があります)。
実験では、銅酸化物高温超伝導体のひとつである、YBa2Cu3O7-yをまずつくります。この超伝導体が、超伝導状態になる温度(転移温度)は、最高で約92ケルビンと比較的高いので、液体窒素(約77ケルビン)を用いて冷やすことによって超伝導状態を実現できます。上の写真は、液体窒素で冷やしたYBa 2Cu3O7-y(黒色)の上に、小さな磁石(金色)が浮かんでいるところです。これも、超伝導の一つの性質です。
近い将来最先端の研究を始めたときに、「自分たちの行った研究の内容や研究成果の意義などをレポートや論文として発表して他の人に伝える」というプロセスはデータを出すプロセスと同じくらい非常に重要です。また、研究者になるという道に進まなくても、簡潔明快な文章を書くというスキルはどんな職業を選ぶにせよ必要になってくるスキルです。レポートを書くことを「文章を書くスキルを身に着けるためのトレーニング」として捉えて、しっかりとしたレポートを書くように努力してください。
レポートを書く上で特に注意してもらいたいのが、以下の3点です。
「正確」かつ「簡潔」に書くことの必要性はすぐにわかると思います。これらに加えて、意外に意識されていないかもしれませんが、3番目の「読み手にストレスを与えない」という観点も重要です。読み手にストレスを与えないということは、単に文章が読みやすくなるというだけでなく、誤解をなくし正確にこちらの言いたいことを伝えることにもつながります。
さらにもう一点意識してほしいのが、
という点です。 なぜなら、今後、論文を書いたり、申請書を書いたり、就職活動をしたりといったさまざまな機会で「研究の面白さや重要性を述べる」ことが必要となることがたくさんあるからです。
「正確」かつ「簡潔に」書くためのレポートの標準的なフォーマットはほぼ世界共通に決まっているといえます。その例を挙げます。
レポートの構成についてのより詳細な情報や図表の詳細は 物理の英語の資料第2章もご覧下さい。
この課題演習ではセメスターの途中に小発表会を1回、セメスターの最後に最終発表会を1回行います。小発表会は発表の練習という位置づけで、YBa2Cu3O7-yの合成と超伝導の確認までについて各グループに発表をしてもらいます。最終発表会では全研究内容について各グループに発表してもらいます。
各グループとも、全員で分担して発表を行ってください。また、発表の長さはグループ全体で20分程度を目安にしてください。最長でも30分以内としてください。その後、質疑応答などがあります。通例では、全体(2グループの合計)で2時間程度かかっています。
当然のことですが、発表で最も大事なのは、「聴き手」に伝えたいことが伝わることです。これを第一に考えて下さい。(注:教官には通じても、相手のグ ループには内容を分かってもらえないような発表は、不適切です。)勿論、話す内容や話し方も重要ですが、ここでは、最も基本的と思われる2点を示します。