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アメリカ物理学会2019年3月大会 in ボストン(アメリカ) 出張報告

https://www.aps.org/meetings/march/

2019年3月4日から8日に開催されたアメリカ物理学会2019年3月大会(APS March Meeting 2019)で当研究室の前野悦輝(教授)と池田敦俊(D2)が発表を行いました。

APS March Meeting 2019

アメリカ物理学会3月大会(以下APS)は、アメリカで活躍する様々な分野の物理学者が自分の研究を発表する場です。 要するに、日本物理学会年次大会(以下JPS)のアメリカ版です。 「アメリカ物理学会」という名前ですが、参加費を払えばどこの国の人間でも参加できます。 しかも日本物理学会とアメリカ物理学会は提携しているので、日本物理学会に所属していれば参加費が割引されます。 しかし学生の場合はアメリカ物理学会に学生会員として入会(初年度は年会費が無料)して、学生料金で参加するのが一番安いようです。 学生料金とはいえ、参加費の高さには驚きました。 JPSの参加費が4,000円なのに対し、APSは175ドル(クレジットカードの請求では19,451円)もしました。 5倍近い価格です。 しかし、相応にお金をかけていることが分かる会議でした。

まず、きちんと会議場(今回はボストン会議場・展示場)を借りていました。 係員もいて、無料のウォーターサーバーもありました。 JPSは大学でやるので現地の教員や学生がすべて準備するのですが、あれはレンタル料やバイト代を払っているのでしょうか? さらにAPSは発表者控室でプロジェクターに映すリハーサルをできたので安心感がありました。 うまくいかない場合は専門スタッフに聞くこともできます。 JPSでは休憩時間にこっそり接続を確認するしかなく、助けてくれる人もいません。 次に、APSでは主要ホテルから会場までのシャトルバスが1日中無料です。 私は毎朝10分ほどバスが発着するホテルまで歩き、そこからシャトルバスに乗って通勤しました。 時間帯によりますが、15分から30分おきにバスが来ました。 JPSでも市バスの臨時便を出してもらいますが、無料ではありません。 「これだけつつがなく会議が進行するなら、お金をかけるだけの価値はある」と私は思いました。 (ただしそれは参加費を研究費で払えるからです。 自腹ならJPSの4,000円だって高いので払いたくありません。)

一方で、参加者はかなりテキトーです。 発表が改まった雰囲気ではなく気楽に話せるのはありがたいです。 しかし発表者がその場に居ないこと(いわゆるドタキャン)が頻繁にあったのには衝撃を受けました。 「発表者がいないので12分休憩」というように、座長(司会者)も特に気にしないようです。 さらに座長がいないこともよくあります。 特に朝のセッションは高確率で座長がいません。 寝坊でしょうか? しかたないので発表者が勝手に進めます。 このあたりの締まりの無さは何とかならないものかと思いました。

APSにはスマートフォン用アプリケーションがあり、プログラムや本部からのアナウンスが見られます。 プログラムから興味がある発表を選んで、自分用のタイムテーブルを作ることもできます。 「日本と違って進んでるなー」と思いました。 もう一点気になったのが、APSでは発表中の写真撮影が自由だったことです。 気になるスライドや参考論文があれば写真を撮って終わりです。 必死にメモを取ったり、メモを取っている間に話を聞き逃すこともありません。 JPSでは撮影禁止なので、自由のアメリカと規制の日本という姿勢の違いがよくわかって面白かったです。 (意見には個人差があります。)

ボストン

私は関西国際空港から香港経由(?)でローガン国際空港までキャセイパシフィック航空を利用しました。 価格が安かったので香港経由にしましたが、関空からまずはアメリカと反対方向に飛んでいくのは滑稽でした。 しかも香港は意外と遠いです。(関空から4時間。) 前回スイスに行ったときは目的地との中間に香港があったので気になりませんでしたが、アメリカに行くときの香港経由はかなり疲れました。 毎度のことながら国際線では映画を楽しみました。 今回はボヘミアンラプソディーやカメラを止めるなを見ました。 最近は国際線でも(有料の)Wi-Fiが飛んでいますが、余計なことはしないでもらいたいです。 飛行機の中でメールもニュースも気にせずに映画を見るから楽しいのです。

香港からアメリカ行きの飛行機に乗る直前、「なぜ行くのか」、「どこから来たのか」、「いつ帰ってくるのか」を聞かれました。 アメリカに行くための審査がどんどん厳しくなっているのを感じました。 入国審査で「会議に参加しに来ました」と伝えると、「APSか?」と聞かれました。 海外からのAPS参加者は多いようで、話が早かったです。

ボストンは日本と同様公共交通機関が発達していました。 車社会のアメリカで鉄道が発達しているのはここだけといううわさを聞きました。 私がボストンについたのは21時前で、空港を出られたのは22時くらいでしたが、まだ「T」という名前の地下鉄が動いていました。 しかも5分から10分間隔で運行しています。 一駅の間隔も徒歩10分ほどで、日本のバス停並みの密集度でした。 そしてなんと、ローガン国際空港からは地下鉄が無料でした。 訪問者に優しい制度ですね。 地下鉄にはいくつか路線があり、空港から伸びる「シルバーライン」が無料です。 ホテルは「レッドライン」、「グリーンライン」と乗り換えた先にありましたが、乗り換え時に改札から出ることもないので、結局タダでホテルまでたどり着けました。 ただし帰りに空港まで行く際はきちんと切符を買わなければ乗車できません。 乗り方は日本と同じで、券売機で切符を購入し、自動改札に入れると扉が開きます。 切符は片道2.75ドルの定額制でした。 カード社会のアメリカでは切符もクレジットカードで買うのが普通で、現金が使えない券売機も多いです。 駅によっては改札がないことがあり、その場合は電車の先頭から乗って切符を運転席横の機械に通します。 また、行き先によって通る改札が分かれている(改札内で反対向きのホームとつながっていない)駅もあるので、改札を通る際は行き先の確認が必要です。 もし反対行きの改札を入ってしまったら、そのまま反対方向に数駅進むとホームがつながっている駅があるのでそこから折り返せます。 (ただしこれは日本でやると不正乗車です。 日本では反対に進む数駅分の運賃が発生します。 ボストンでは駅の案内にこう書いてあるので、公式に認められた乗り方なのだと思います。)

写真集

空からボストンを見てみようとしたのですが、到着も出発も夜だったのできれいに写真が撮れませんでした。 印象としては、ふつうの街です。
ボストンという街では気温(TEMPERATURE)34度で大雪が降るそうです。 おもしろいですね。 アメリカでは華氏を使うので、34度というと摂氏1度です。 雪が降るのも納得です。 予想降雪量(EXPECTED SNOW)は13インチ(33センチメートル)らしいです。
ニュースを見て笑いながら外へ出ると大雪が降っていました。 そういえば私はボストンに出張中でした。 この雪が出張中の6日間ずっと残っているくらい、毎日気温が上がりませんでした。 後で知ったのですが、ボストンは札幌と同じくらいの緯度にあるそうです。 荷物になるのでダウンジャケットを持って行かなかったことを後悔しました。 ボストンに居る知り合いからは「なぜ京都が世界一寒いと思っているんだ」と笑われました。
雪のトリニティ教会。 きれいですね。 中にも入れるそうですが、会議の後は閉まっていました。
歴史的な教会のすぐ隣には、ニューイングランド地方で最も高いビルである200クラレンドンがあります。 反対側から見るとガラス張りの200クラレンドンにトリニティ教会が映って面白いです。
ホテルの近くにはパブリック・ガーデンという公園がありました。 一面の雪景色でした。
パブリック・ガーデンの隣には、ボストン・コモンという広場があります。 ボストンにはアメリカ独立運動ゆかりの地が多数あり、「フリーダム・トレイル(自由への軌跡)」として保存されています。 その出発地点がボストン・コモンです。
マサチューセッツ州議事堂。 ガイドツアーもあるそうですが、やはり会議の後では閉館していました。 今回は会議が忙しいので、ボストンの楽しみ方は「フリーダム・トレイルを歩くこと(内部は見学しない)」になりました。
パーク通り教会。 日曜の礼拝以外は開いていないようで、基本的に観光はお断り?
キングス・チャペル。 塔と十字架がないので最初は教会だと気づきませんでした。
旧市庁舎とベンジャミン・フランクリンの立像。 地球の歩き方に載っているのでとりあえず歩いていますが、ベンジャミン・フランクリンが何をした人なのかは知りません。
オールド・サウス集会場。
旧州議事堂。
ボストン虐殺地跡。 ここで5人のアメリカ人(当時はイギリスの植民地市民)が殺されたことが独立戦争の引き金になったそうです。
ファニュエル・ホールとサミュエル・アダムスの像。 フリーダム・トレイルはまだ続いていますが、今回はここで時間切れでした。 これまでの道のりも1日で歩いたわけではなく、早朝と夕方に少しずつ歩いたのをつなげています。 全体の3分の2くらい見て回れたと思います。 全長は4キロメートルくらいなので、歩くだけなら1時間らしいですが、見学しながらだと丸1日かかるそうです。
フリーダム・トレイルではありませんが、少し足を伸ばしてニューイングランド水族館を訪れました。 大阪の海遊館と同じ人がデザインしたそうです。 建物の中央にある円筒形の水槽の周りを上りながら各階の展示を楽しむスタイルでした。 ペンギンのお世話を間近で見られたり、最上階では中央の水槽に潜っている飼育員の人と無線で会話して質問できたり、エンターテインメント性あふれる楽しい水族館でした。
水族館のすぐ近くにはクリストファー・コロンブス・ウォーターフロント公園があります。 ボストン・コモンやパブリック・ガーデンに比べると小さく感じてしまいました。 コロンブスの像があります。
別の日にはボストン美術館に行きました。 海外出張では、「英語を読まなくていいから」という理由でよく美術館に行きます。 絵を見て「絵だなー」と思うだけなので日本でも海外でも同じ体験ができます。 博物館に行ってしまうと英語を読みすぎて頭が痛くなります。 美術館から帰ったのは夜の9時か10時くらいでしたが、知らない人に襲われることはありませんでした。 初日に空港からホテルに着いたのも夜11時くらいでしたが事件には巻き込まれませんでした。 それでもやはり人の多い車両や道を選ぶべきだと思います。 ボストン美術館にはモネの「睡蓮」や「日本娘」がありました。 驚くべきことに、日本の改元についての特集がありました。(美術館を訪れたのは2019年3月8日で、4月1日の新元号発表前でした。) 現在の皇后陛下がボストンで暮らしていたという縁があるからかもしれません。 そういう縁があったこと自体この展示で初めて知りました。 日本の天皇家とは何なのか、元号という制度について、明治天皇から現在の上皇陛下と天皇陛下、そしてその後の跡継ぎ問題について解説されていました。 天皇家が展示あるいは解説されるというのは私にとってとても新鮮で印象的でした。 令和になった現在もこの特集はあるのでしょうか?
会議が終わった翌日には、前野教授と一緒にマサチューセッツ工科大学(MIT)を訪ねました。 MITの先生に「この辺で面白いところありませんか?」と聞くと「ハーバード大学の博物館めっちゃええで!」と教えてもらいました。 「MITちゃうんかい」と思いながら行ったハーバード大学の博物館が上の写真です。 ガラス細工の精巧な植物模型や様々な化石と鉱物があり、確かに面白かったです。
ハーバードに行った後は、プルデンシャルセンターの50階にあるスカイウォーク展望台に登りました。 このビルはボストンでは200クラレンドンに次ぐ高さだそうです。 オフィスやアパート、ショッピングモールが入った複合施設です。 写真は展望台からの眺めで、中央の真っ暗な帯が川で、橋を渡ったところにMITが、その左奥あたりにハーバード大学があるはずです。
これが最終日朝の雪の様子です。 5日たってもまだ溶け残っていました。
最後に、きちんと会議に参加した証拠で締めくくります。 会議の懇親会で出た炭酸飲料です。 「本物の砂糖で作られています(MADE WITH REAL SUGAR)」と書かれていますが、アメリカでは本物の砂糖が高級品なのでしょうか? ディストピアを感じますね。