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LaRu4P12でのNMR測定を通した超伝導体への磁場効果の研究

近年、CeCoIn5など、超伝導相内の低温高磁場領域においてFFLO状態という異なる運動量をもつ電子同士がクーパーペアを組む特殊な超伝導状態が実現することが知られています。しかしながら、FFLO状態の実現を確認する方法は確立されていません。数ある測定手法の中で、NMR測定では2つの方法でFFLO状態を確認することが出来る点で、FFLO状態を観測するのにうってつけな測定手法であるといえます。そのうちの1つがFFLO 状態における秩序パラメータの振動によっておこる、アンドレーエフ反射によって上昇する状態密度を核スピン―格子緩和率1/T1で観測することです。我々のグループでもCeCu2Si2において超伝導転移温度以下で1/T1が増大する振る舞いが確認されています。 一方、通常のs波超伝導体において低温高磁場領域における精密なNMR測定はなされていませんでした。そこで我々はFFLO状態が実現する超伝導体との比較のために比較的高温で超伝導が実現し、NMRで観測しやすいP核を持つLaRu4P12の超伝導状態におけるNMR測定を行いました。

我々は1/T1の温度依存性を様々な磁場で測定し、さらに0.8 Kにおける磁場依存性を測定しました(図)。低温での磁場依存性から超伝導体内における磁束に誘起された準粒子の状態密度が磁場によって上昇していることが見て取れます。この磁場誘起の準粒子の状態密度は広い磁場領域でH/Hc2の2乗に比例することがわかりました。このことはs波超伝導体において磁束が超伝導が壊れるまで磁場に線形に増加していくことから説明されます。

本研究は東京都立大の佐藤英行教授(現同大名誉教授)、菅原仁教授(現神戸大学)との共同研究です。この結果はJPSJ誌Short Noteに掲載されています。

図:LaRu<sub>4</sub>P<sub>12</sub>の1/<i>T</i><sub>1</sub>の磁場依存性。
図:LaRu4P12の1/T1の磁場依存性。磁場によって磁束が侵入して準粒子の状態密度を測定することが出来る。

論文情報

Katsuki Kinjo, Shunsaku Kitagawa, Yusuke Nakai, Kenji Ishida, Hitoshi Sugawara, and Hideyuki Sato
J. Phys. Soc. Jpn. 88 065002 May. 2019