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圧力下測定

はじめに

物質に圧力を加えると格子定数が縮むことで、磁気転移温度や超伝導転移温度といった物質の性質が変化します。 物質の性質を変化させながら測定することで、超伝導や磁性の起源を探ることが可能なため、圧力は重要なパラメーターの一つです。 圧力測定において重要な要素は以下に挙げる2つです。

圧力セルの最大到達圧と試料空間
最大到達圧の高い圧力セルを用いれば、幅広いパラメーター空間を調べることができますが、その分試料空間は小さくなります。NMR測定など信号強度が試料サイズに比例する測定では試料サイズも重要なため適切なものを選ぶ必要があります。
圧力媒体
圧力測定では試料を液体(圧力媒体)中で加圧することで静水圧を実現します。よく用いられる圧力媒体としてはフロリナートやダフネオイル、メタノールエタノール混合液があります。これらの圧力媒体は比較的簡単に取り扱うことができますが,多くの圧力セルは一軸的に荷重を加えるため、圧力媒体が一定圧力を超えると固化して静水圧性が保たれなるという制約があります。窒素やアルゴンを用いると固化した後も静水圧性が保たれるという報告があり、より高い圧力を目指す場合には有効な圧力媒体です。ただし低温で封入する必要があり高度な技術を要します。

圧力セルの仕組み

当研究室では主に「ピストンシリンダーセル」と「インデンターセル」を使用しています(写真)。ここでは前者を例にセルの内部構造と加圧の仕組みを解説します。

ピストンシリンダーセルの内部構造
ピストンシリンダーセルの模式図と、加圧の手順。

まず試料を圧力媒体で満たし、密閉します。それから(1) 内部のピストンを用いて大きな力で試料空間を押し、圧縮します。うまくいけば、この時点で試料に1 GPa(1万気圧)のオーダーの圧力がかかります。最後に(2) ねじを締めてピストンを固定します。

このような高圧の実現のためには、セルを特別に硬い材料で作製する必要があります。私たちの研究室の圧力セルの本体には、主にCuBe(銅とベリリウム)合金やNiCrAl合金といった材料が用いられています。また,大きな力のかかるピストンなどにはWC(タングステンカーバイド)が使用されています。