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若手研究者派遣・招聘プログラム in スイス 出張報告

http://topo-mat-sci.jp/topoqetc/

2018年10月28日から11月9日にかけて、若手研究者派遣・招聘プログラムを利用した共同研究のために池田(D2)がポール・シェラー研究所とスイス連邦工科大学チューリッヒ校に滞在しました。

JREP

若手研究者派遣・招聘プログラム【JREP】(Junior Researcher Exchange Program) は、 科学研究費プロジェクト「トポロジーが紡ぐ物質科学のフロンティア」に所属する若手研究者の海外派遣と海外の若手研究者の招聘を行うプログラムです。 私はちょうど一年前の10月28日にも、このプログラムを利用してアメリカの スタンフォード大学に出張しました。 飛行機などの交通費は全額補助されますし、ホテル代や食事代もそれなりに補助されます。 合計で数十万円も支給してもらえるのでありがたいです。

研究についてのまじめな内容は http://topo-mat-sci.jp/achievements/ のNewsletter第4号に掲載される予定です。

スイス

私は関西国際空港から香港経由でチューリッヒ空港までキャセイパシフィック航空を利用しました。 キャセイパシフィック航空を初めて知ったのですが、ウィキペディアによると『実質最高評価の「ザ・ワールド・ファイブ・スター・エアラインズ(The World's 5-Star Airlines)」の認定を得ている』らしいです。 サービス面で致命的な問題はありませんでした。 機内食はすき焼きとそうめんという冬か夏かわからない組み合わせでした。 国際線では映画を見るのが楽しみなので、ズートピアやバケモノの子、レディープレイヤーワンなどを見ました。 香港とチューリッヒを結ぶ飛行機でも日本の映画が視聴できました。

スイスはかなり寒かったです。 京都からは半袖Tシャツにパーカーを羽織っていったのですが、チューリッヒ着陸前に「現在のチューリッヒの気温は3℃です」とアナウンスされて背筋が凍りました。 一応重ね着する服は持っていたのですが、もこもこのジャンパーがいるくらいの寒さでした。 食堂に行くときなど、一緒に行く現地の人に「ジャケットいらんの?」と言われ続けました。 街中でその寒さでしたから、アルプスで観光する人はきちんと寒さ対策が必要です。 おかげで帰国後はしばらく半袖で過ごしていました。

空港から最初の目的地のポール・シェラー研究所までは、電車で1時間のあとバスで20分くらいです。 スイスは公共交通機関がかなり発達しており、運航ダイヤも正確なようです。 都市間の移動は電車、市内での移動は路面電車とバスといった印象を受けました。 公共交通機関を利用する時に大変役に立つのが、スイス連邦鉄道(国鉄)のwebサイト(英語)です。 出発地と目的地を入力すれば、行き方や所要時間が出てきます。 国鉄の駅だけでなく、路面電車やバスを使用した経路まで検索できます。 ある経路だけの時刻表(パーソナルタイムテーブル)を作成することもできるので、私は空港からポール・シェラー研究所まで、研究所からスイス連邦工科大学チューリッヒ校まで、大学から空港までの時刻表を日本で作成して印刷したものを持っていきました。 海外で携帯電話がインターネットにつながっていれば、国鉄のスマートフォンアプリでも経路検索ができます。 アプリならクレジットカードで切符を購入することもでき、スイスのIT面の発達ぶりを実感しました。 私は自動券売機で紙の切符を買っていましたが、電車の駅やバスでは(驚くべきことに走行中のバスの中でも)フリーWi-Fiが利用できるので、アプリを使ってインターネット経由で切符を買うこともできたと思います。

ひとつ注意が必要なのは、券売機で切符を買う際に経路も指定しなければならないことです。 日本では出発駅と到着駅のみから料金が決まりますが、スイスでは経路によって料金が変わります。 つまり、大回りをすればそれだけ高くなるということです。 さらに、最も安い経路が最も行きやすいとは限りません。 最短ルートはバスを多用したりするので、乗り換えを少なくしようとすると少し大回りすることもあります。 目的地だけでなく、途中にどのような駅があるのかも把握しなければならないのが大変です。 途中の停車駅は電光掲示板に載っていますが、おそらくパーソナル時刻表には載っていません。 アプリを使えば検索した行き方の切符を買えるので何も気にする必要はありません。

ポール・シェラー研究所はチューリッヒからずっと西のフィリゲン(Villigen)という町にあります。 (どうでもいいですが、チューリッヒ空港の人に「Villigenに行きたいです」と言うと、券売機で"Villin"と入力して「そんな駅ないよ」と言われることが2回連続でありました。 「"Villingen"じゃなくて"Villigen"だから'n'は無し」と言わないといけませんでした。) 研究所は住宅地から徒歩で20分くらいのさらに僻地にあります。 加速器関連の施設なので遠く追いやられているのか、住宅からの振動や電波といったノイズを避けているのかもしれません。

実験後はチューリッヒにあるスイス連邦工科大学に向かいました。 チューリッヒは歴史ある教会、博物館や美術館、ビル、川と湖など何でもありな街でした。 フィリゲンにも川が流れており、町と町の間には山や草原があり、自然も豊かでとても過ごしやすい国でした。

写真集

空から香港を見てみよう。 ビルが薄っぺらいな気がするんですが、地震はないのでしょうか?
空からチューリッヒを見てみよう。 写真でも少し写っていますが、町のすぐそばに森や山があります。 街中でも近くに自然があるというのはとても心地いいです。
チューリッヒ空港のエスカレーターです。 スイスでは左側を歩くようです。 スイスは関西です。
空港近くは単なるビル街で、無個性な景観に初めはがっかりしました。 しかし移動を続けると印象は一変します(次の写真)。
わかりにくいかもしれませんが、住宅地が終わるとすぐに原っぱや森になります。 「田舎だから」というものではなく、どの町と町の間でもそうです。 チューリッヒのすぐ近くにも自然がありました。
フィリゲンの街並み。 ゆっくりした田舎町という感じでした。
右にあるのがポール・シェラー研究所、左にあるのが山です。 フィリゲンの住宅街から徒歩20分。
ポール・シェラー研究所の食堂に行く途中に川が流れています。
川沿いの小道を散歩しました。 繰り返しますが、これはポール・シェラー研究所の敷地内です。
ポール・シェラー研究所にはちょっとした科学博物館のようなものがあり、太陽電池での発電や温度差による水の対流、宇宙からの放射線の観測などが説明されています。 写真は塩か何かの結晶です。
実験はコンピューター制御なので、結果を待つ間にドイツとフランスの国境の町バーゼルを訪ねました。 この町は現代建築が有名らしいです。 写真は全面ガラス張りの国際見本市市場。
建築の町らしく、スイス建築博物館があります。 見えにくいですが、扉の右の黒い看板に"ARCHITEKTURMUSEUM"(建築博物館)と書いてあります。 いかに安く住居を作るかや、戦後に一気にいいかげんに作られた建物をどのように現代風に補修・改築するかなど、テレビ番組の劇的ビフォーアフターに出てくるような匠の仕事を紹介していました。
この町にも川が流れており、散歩が気持ちいいです。
現代建築だけでなく教会などの歴史を感じさせる建物もあります。 絵葉書みたいできれいでしょう?
黄葉と家ですが、絵画のような美しさです。 今までの海外旅行出張では教会内部や博物館といったひとつひとつのスポットに焦点を当てていましたが、バーゼルでは町の風景を楽しむことができました。 「街歩き」というものをした気がします。
ちょっとした道に入ると小ぢんまりした雰囲気になるのですが、小ぢんまりした街並みを小ぢんまりした道から写すのは難しいですね。
さっきの写真の道の最後にある聖アルバン門。 すぐ近くに川が流れており、公園のようになっています。
バスラー・ミュンスター。 全体的にスイスは道が狭かったり街路樹があったりして写真が難しいです。
バスラー・ミュンスターの窓からの眺め。 ミュンスターが川を見ているとき、川もまたミュンスターを見ています。
町を歩いているとところどころに広場(なんとかplatz)があります。 広いところでは市場や遊園地になっています。
市庁舎ですが、かなり宗教的な雰囲気です。 写真は暗いですが、本当は赤色がもっと明るくてきれいです。
違う構図の市庁舎です。 これくらい赤色が映えています。
ティンゲリー美術館。 この建物自体も現代建築として有名らしいです。 ティンゲリーという芸術家は動くアートが好きだったようですが、基本は何かをぶんぶん回しているだけでした。 日本のからくりの精巧さには程遠いと感じました。 (からくりは芸術が目的ではないので比べるべきではないのかもしれませんが、芸術が目的ではないからくりのほうが私にはよほど芸術的に見えます。)
チューリッヒに移動するときの駅の電光掲示板です。 例えば10:00発のIR36に乗ればチューリッヒ中心駅(Zürich HB)に行けます。 この電車は途中にBadenに止まるようなので、券売機ではBaden経由の切符を買います。 (ほかにも途中で止まると思いますが、主な停車駅だけを表示しています。)
チューリッヒの街並みです。 にょきにょきしているのは教会だと思います。 右端に少し写っている黄葉がきれいでした。
先ほどの写真はスイス連邦工科大学の何らかの施設からの眺めです。 まるで神殿のような造りです。
奥にあるのがグロース・ミュンスターです。 塔の上に上ることができます。 なぜかこの周りにeduroam(大学や研究機関用の共用Wi-Fi)が飛んでいました。
塔の上からの眺めです。 チューリッヒにも川が流れており、チューリッヒ湖に続いています。
グロース・ミュンスターからもチューリッヒ湖が見えます。 この日は曇っていましたが、晴れていれば湖の向こうの山がもっときれいに見えるそうです。
大学施設からの眺めでにょきっと見えていたフラウ・ミュンスター。 この日はコンサートが行われていて中には入れませんでした。
チューリッヒで最も古い聖ペーター教会。 中に入るとオルガンコンサートかなにかの練習がされていました。
チューリッヒ美術館にある地獄の門。 前スタンフォードのカンター・アーツ・センターにもいなかった? 美術館にはゴッホの絵やモネの睡蓮など、私でも知っている画家の作品が数多くがありました。
散歩ばかりしていそうなので、きちんと仕事をしてきた証拠で締めくくります。 上から二番目の、"Inverse Perovskite Oxide Superconductor Sr3-xSnO"というのが私の研究発表です。