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米澤のドイツ・フランス出張報告

2006年7月、国際会議The 8th International Conference on Materials and Mechanisms of Superconductivity and High Temperature Superconductors (M2S-HTSC-VIII)への参加と共同研究をしているパリ南大学訪問のため、約10日間の海外出張をしました。これはその報告です。

国際会議M2S-HTSC-VIII出席

M2S会議が開かれるのはドイツ東部の古都ドレスデン。かつてのザクセンの都で、壮麗な宮殿や教会が有名です。

ツインガー宮殿中庭
ツインガー宮殿の中庭。この後、この中庭で音楽会が開かれていました。
謎の彫刻
師匠(謎)。

そしてドイツはビールでも有名です☆

ビール飲もうぜ
オープンカフェで会議後の一杯!

国際会議M2S-HTSCは、長い歴史と1千人クラスの参加者数を誇る、超伝導関連分野では世界最大級の会議です。今回も銅酸化物高温超伝導体をはじめとして、そのほかの酸化物超伝導体、炭素やホウ素化合物、有機物、重い電子系の超伝導などあらゆる超伝導体が勢ぞろいしていました。さらに、希薄原子気体のボーズ凝縮やBCS-BECクロスオーバーに関するセッションもあり、物質における超伝導以外の分野も取り込む勢いを感じました。

国際会議M2Sの始まりです。
国際会議M2S-HTSCのオープニングセレモニー。5日間のアツイ会議が幕を開けます。
M2Sのポスターセッション。
ポスターセッションの様子。会場に冷房がなかったので、暑さにくらくらしながらアツイ議論を交わしています。
M2Sのサマリートーク。
会議の最終日、サマリートークをするわれらがボス前野さん。

私のポスター発表したAg5Pb2O6は今回の発表された物質のうち、(希薄原子気体を除けば)恐らく最も低い転移温度を持つ物質だったようです…。52mKという転移温度を聞くと驚いてしてしまう人も多かったのですが、それ以外にも室温付近での抵抗率の温度の2乗の温度依存性という面白い性質もあるため、そちらに興味を持ってくれる人も多くいました。これまでの発表と違ったのは、すでにこの物質に興味を持っていて発表を聞きに来てくれる人がいたことです。こういう人がいると、自分の研究がまさに世界に広がりつつある感じがして非常にうれしく感じます。この発表をきっかけに新たな共同研究も始まりそうな感触。とても有意義な発表だったと感じました。

M2Sの発表に使ったポスター
こんな感じでポスターを貼って発表をします。

フランス・パリへ

金曜日の会議終了後、急いで空港へ。ここからは一人旅。いきなり電車の切符の乗り方がわからない! しかも、迷っている間になんと空港行きの電車が行ってしまいました。ドイツの駅はアナウンスがないのですが、日本の電車に乗りなれていると、心の準備ができないんですよね。

にっくき切符の自動販売機。
切符の自動販売機。英語を話せる人に聞いて、何とか突破しました。。

ぎりぎりの時間にどうにか空港に到着~、と思ったら、なぜかフランクフルト行きの出発まであと4時間くらいある!?? よくみると出発時間を勘違いしてました。仕方ないので、ビールを飲んで出発を待ちます。やっと乗れた飛行機に乗り、フランクフルト経由でパリへ向かいます。しかし飛行機が遅れてシャルル・ドゴール空港到着は夜の11時過ぎ。この日はフランス革命記念日で、未だ盛り上がっている北駅周辺では爆竹の音がしました。拳銃かと思ってマジでびびりました。ホテルに着いたのは夜中の2時。さすがにくたくたでした…

土日はパリ南大学で行うセミナーの準備とちょろっと観光もしました。ルーブル美術館ではモナリザやミロのビーナスとご対面。もっと早くセミナー準備をしておけば夜も遊べたのに…。しかし出発直前まで実験してたから仕方ないかな。

ミロのビーナス。
本とかではめったに見られない(?)ミロのビーナスの後姿。ルーブル美術館はほとんどの場所で写真OKなのがすごいです。

パリ大学訪問

パリから南へ電車で約30分、パリ大学の固体物理学研究所はOrsayという緑一杯の地域にあります。

le Guchet駅周辺。いなか。
固体物理学研究所はこんなのどかな場所にあります。

固体物理学研究所のジェローム教授・パスケール教授の研究室とは昨年から共同研究をしています。去年の夏、先方の研究室からうちに1ヵ月半だけNada Jooさんという学生が来て、一緒に実験をしました。それをさらに発展させて私が今実験をしています。今回の訪問目的はその結果報告と今後に向けた議論をしてくることです。

固体物理学研究所 分子導体・高圧グループのメンバー
固体物理学研究所 分子導体・高圧グループのメンバーです。左から2番目がNadaさんです。

セミナーは私にとって初めての海外での口頭発表でした。不安もありましたが、普段のコロキウムなどで培った経験で何とか乗り切れたように思います。その後も、ディスカッションをしたり、研究室の設備を見せてもらったり、Nadaさんのうちに夕食に招かれたり、と充実した研究室訪問でした。

終わりに

今回、初めて非英語圏の国へ行きましたが、思っていたよりも何とかなるなあという感じがしました。特に、「フランス人は英語で話しかけてもしゃべれないフリをする」などと言う噂を渡航前は聞いていましたが、実際は結構英語もわかってくれました。路地裏の小さいレストランのおばちゃんでも片言の英語と一杯の笑顔で接してくれたのがすごく印象的でした。英語しかしゃべれない日本人がフランスに行くより、英語しかしゃべれない外国人が日本に来る方がよっぽど苦労するでしょうね。。

海外へ行くといつも思うのは、外の世界を見ることで今まで知っている世界を相対化して見られるのが非常にためになるということです。実験のやり方など研究に関することでもそうですし、社会一般のことでも外と日本はこんなに違うのか、と感じることができます。機会があればまた海外に行ってみたいですね。