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逆ペロブスカイト酸化物であるSr3SnOでは、(Sr2+)3Sn4−O2−というように、 スズが陰イオン状態になっていると予想されています。 金属であるスズは通常ではSn2+やSn4+という陽イオンになるので、 酸化数の正負が「逆」になっているSn4−という陰イオン状態は異常であり、 もし本当にSn4−が存在するならば酸化物ではたいへん珍しいです。 ところが、実際に物質中でスズがいくつ電子を持っているか、実験的には調べられていませんでした。
我々はスズのイオン状態を調べるためにメスバウアー効果を利用しました。 メスバウアー分光法では、物質がどの波長のガンマ線を吸収するか調べることでスズの状態を知ることができます。 (ガンマ線とは紫外線よりももっと波長が短い光です。) その結果、Sr3SnOに含まれるスズが確かにSn4−になっていることを明らかにしました(図)。 さらに、ストロンチウムが少ないSr3−xSnOの内部では、 ストロンチウム欠損(3−xのxの部分)に隣接しているスズは Sn4−とはさらに異なったイオン状態であることも発見しました。 酸化物でスズが陰イオンになっているのが観測されたのは初めての成果です。 この発見をとおして、異常な金属陰イオンを持つ逆ペロブスカイト酸化物にさらなる注目が集まると期待できます。
本研究は京都大学複合原子力科学研究所の瀬戸教授のグループとの共同研究です。 論文情報は下に記載してありますが、研究者でない方などのPhysical Review B誌を購読されていない方は 京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI)からも論文をご覧いただけます。