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NMRで見る鉄系超伝導体FeSeの擬ギャップ的振る舞い

鉄系超伝導体FeSeはTS = 90 Kで構造相転移を示した後、低温まで磁気秩序を示さずにTc = 9 Kで超伝導転移する特異な鉄系超伝導体です。我々は19Tという高磁場までの核磁気共鳴測定を行いました。左図は各磁場での核スピン-格子緩和率1/T1Tの温度依存性です。1/T1TTS以下で反強磁性ゆらぎの発達に伴い増大し、Tc 以下で急激な減少を示します。

FeSeでは超伝導状態だけでなく通常状態においても1/T1Tが強く磁場に依存します。Tc直上に注目すると(右図)、1/T1TTcより十分高温Tpから減少することが分かります。Tpは磁場を強くしていくとTcと同様に減少します。これは、Tpが超伝導と関係していることを示唆しています。1/T1TTcより高温からの減少は、FeSeにおいて銅酸化物高温超伝導と同様に強い超伝導ゆらぎが存在することを示唆してます。このような超伝導ゆらぎによる擬ギャップ的振る舞いは他の物理量でも観測されています[1]。

本研究はKIT、東北大学との共同研究です。この結果はJ. Phys. Soc. Jpn.誌に掲載されています。preprintはこちら

FeSeにおけるNMRの測定結果.1/T1Tとその拡大図,および交流帯磁率の温度依存性を磁場ごとに示している.
図: 各磁場での1/T1Tの温度依存性(左)と低温領域の拡大図(右下)。交流磁化率の温度依存性(右上)。

[1] S. Kasahara et al., Nat. Commun. 7, 12843 (2016).

論文情報

Anlu Shi, Takeshi Arai, Shunsaku Kitagawa, Takayoshi Yamanaka, Kenji Ishida, Anna E. Bohmer, Christoph Meingast, Thomas Wolf, Michihiro Hirata, and Takahiko Sasaki
J. Phys. Soc. Jpn. 87 013704 Dec. 2017