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59Co核四重極共鳴測定によるU(Co1-xFex)Al (0 ≤ x ≤ 0.02) の強磁性臨界現象

遍歴メタ磁性体UCoAlは、低温でc軸方向にわずか0.6 T程度の外部磁場を掛けると強磁性状態に一次転移(メタ磁性転移)する物質です。また、外部磁場を掛けなくても、一軸性圧力(c軸方向)や元素置換(Fe, Ru等)[Ref. 1]でも強磁性が誘起されます。これらの過去の実験結果から、UCoAlは遍歴強磁性体に普遍的に存在すると理論的に予想されている温度-磁場-圧力の三次元相図[Ref. 2]に従うと期待されています。この相図では、強磁性転移が二次から一次に変化する三重臨界点が存在しますが、UCoAlにおいて、三重臨界点の存在を示唆する明確な実験報告はこれまでにありませんでした。この問題を解決すべく、我々は、Fe置換系物質U(Co1-xFex)Alに対して、59Co核サイトの核四重極共鳴(NQR)測定を行いました。その結果、NQRスペクトルの変化から、わずか1%のFe置換で出現する強磁性転移が一次転移であることを観測しました。また、核スピン-スピン緩和率1/T2から見積もられる磁気ゆらぎには、強磁性転移温度よりも高温のTmax ~ 20 K付近に異常が見られ、Fe置換量を増やすにつれ、ゆらぎが増強されることを観測しました。これらの結果は、理論的予想[Ref. 3]とも一致しており、三重臨界点の存在とその近傍での磁気ゆらぎの発達を示唆しています。

2014年1月のTopicsの図
図 : U(Co1-xFex)Alの温度(T) - Fe置換量(x)相図と1/T2のカラープロット。○は一次の強磁性転移温度を、□は1/T2の異常の温度を表す。また、比較のためYamadaによる理論曲線[Ref. 3]を載せている。

本研究は東北大学の木村憲彰准教授との共同研究によるものです。この結果はPRB誌に掲載されています。

[Ref. 1] A. V. Andreev et al., JMMM 169, 229 (1997).
[Ref. 2] D. Belitz, et al., PRL 94, 247205 (2005).
[Ref. 3] H. Yamada, PRB 47, 11211 (1993).

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