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従来、強磁性と超伝導は共存し得ないと考えられてきましたが、2000年に加圧下で強磁性と超伝導を同時に示すUGe2が発見されて以来、その常識が覆されました。さらに2007年に発見されたUCoGeでは常圧でも強磁性と超伝導が共存することが明らかとなり、強磁性と超伝導が非常に異方的であることなども分かってきました。共存のメカニズムとして、Uの同じ5f電子が強磁性と超伝導を同時に担っていると考えられていますが、UCoGeは磁性元素であるCoを含んでいるため、Co-3d電子が強磁性に関与している可能性がバンド計算の結果からも指摘されています。そこで、我々はUCoGeの強磁性と超伝導の起源を調べるために、YCoGeに着目しました。YとGeはf電子を含まない非磁性元素なので、YCoGeを調べることでCo-3d電子の磁性への寄与が分かると考えることができます。また、結晶構造がUCoGeと同じTiNiSi型斜方晶であり、バンド計算によるとフェルミ面近傍のCo-3d電子の寄与がUCoGeと類似していることから、YCoGeはUCoGeの比較物質として適していると考えられます。我々は、YCoGeについて、ミクロの立場から磁性を調べるのに有力な核四重極共鳴(NQR)および核磁気共鳴(NMR)を行いました。核スピン格子緩和率1/T1の温度依存性を調べた結果、以下のことが明らかになりました。
1) YCoGeは低温まで1/T1Tの金属的な振る舞いを示し、超伝導も磁気的な異常も示さない。
2) YCoGeのゆらぎは等方的である。
3) YCoGeの低温でのゆらぎの大きさはUCoGeの10~102倍も小さい。
以上のことは、『UCoGeの強磁性と超伝導には、U-5f電子が重要である』ことを強く示唆しています。また、UCoGeで観測されているイジング的な強磁性ゆらぎもU-5f電子によるものであり、UCoGeの異方的な超伝導に密接に関係していると考えられます。
この結果はJournal of Physical Society Japan誌に掲載されています。