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2008年に発見された鉄系超伝導体はその高い超伝導転移温度などから注目が集まっています。この鉄系超伝導体の発現機構を探る上で超伝導電子対の対称性を知ることは重要な課題だと考えられます。これまでの様々な実験や理論から鉄系超伝導体LaFeAsO1-yの超伝導電子対の対称性の有力な候補として従来型のs波、超伝導ギャップ間の位相の符号が反転しているs±波が挙げられています。超伝導への不純物効果はこれら2つの対称性を区別する手段として有効です。私たちは物質・材料機構の室町英治氏、山浦一成氏らと共同で、LaFeAsO0.85におけるZn置換効果を微視的に調べました。
図(a)にあるようにLaFeAsO0.85の超伝導性はZnを3%置換することで消えますが、通常状態のスピン-格子緩和率1/T1[図(b)]やNQR中心周波数はほとんど変化しない。これらの物理量はそれぞれ電子構造・結晶構造の変化に敏感であり、今回の結果から電子構造・結晶構造はZn置換にほとんど影響されない事が示唆されます。以上のことからZnが超伝導にたいして非磁性不純物として働いており、鉄系超伝導体の超伝導対称性が従来型のs波ではなく、s±波のような非従来型超伝導であることが考えられます。
この結果はPhysical Review B誌に掲載され、Editors' Suggestionに選ばれました。