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Sr2RuO4‐Ru共晶体は Sr2RuO4の超伝導転移温度Tc(= 1.5 K)より約2倍高い3 Kからノンバルク超伝導を示し、 3‐K相と呼ばれている。実験と理論の両面からの研究により、 3‐K相超伝導はSr2RuO4とRuの界面のSr2RuO4側で起きていることが有力視されているが、 Tc上昇の起源は未解明である。
我々は、Ruが析出したことによるSr2RuO4の異方的な結晶の歪みがTcの上昇に関係していると考え、 3-K相超伝導の一軸性圧力効果を調べた。 Sr2RuO4は層状構造をとるため、一軸性圧力印加時に試料がへき開し易いという技術的な問題があったが、 試料の側面を比較的弾性率の低い合成樹脂(スタイキャスト)で囲うことで解決し、より高い一軸性圧力(0.5 GPa)の印加に成功した。 結晶軸の[001], [100], [110]方向に一軸性圧力を印加して3-K相の磁化測定(T ≧ 1.8 K)を行い、 いずれの一軸性圧力下においても最低温での反磁性磁化(バルク的超伝導体積分率)が上昇することを初めて明らかにした(図1)。 その上昇はab面方向の一軸性圧力下で顕著に大きく、1%以下であった超伝導体積分率が実に40%にも達し、 超伝導が界面だけでなく、バルクSr2RuO4にも深く広がっていることを示唆する結果を得た。 これら結果はRuO2面の結晶歪み(候補としてRuO6八面体の回転)が超伝導転移温度の上昇に影響を与えていることを示唆しており、 本研究により3-K相超伝導のメカニズム解明に繋がるであろう重要な性質を明らかにした。
この結果はJournal of the Physical Society of Japan誌に掲載された。