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昨年発見された鉄系高温超伝導体LaFeAs(O1-xFx)では、母物質がストライプ型反強磁性転移を示し、フッ素ドープによって反強磁性が抑えられたところで超伝導相が現れるため (図1参照)、超伝導と反強磁性との関係に興味が持たれています。 今回、私たちの研究グループは、東工大の細野秀雄教授と神原陽一研究員らと共同で、核磁気共鳴法(NMR)を用いて、LaFeAs(O1-xFx)における磁気励起がフッ素ドープとともにどのように変化するのかを75As核のNMRから調べました(図2)。
母物質や低ドープ領域で見られた顕著な反強磁性ゆらぎはフッ素ドープとともに抑えられ、超伝導転移温度が最大値をとるx = 0.11 では室温から低温に向かって核磁気緩和率(T1T)-1が減少していく、擬ギャップ的な温度依存性が見られることがわかりました。この擬ギャップ的な振る舞いは反強磁性相とは離れた高濃度フッ素領域で観測されることから、この擬ギャップの起源は銅酸化物高温超伝導体で見られた擬ギャップとは異なることが示唆されます。 また、これらの結果は、NMRで観測することができる低エネルギーの反強磁性ゆらぎがフッ素置換量に対して非常に顕著に変化するのに対して、超伝導転移温度はあまり変化していない、ということを示しています。このことは、この系においては必ずしも低エネルギー反強磁性ゆらぎが超伝導転移温度と相関しているわけではないことを示唆しており、銅酸化物高温超伝導体 (例えばLa2-xSrxCuO4など) とは異なる傾向を示すことがわかりました。
この結果New Journal of Physics誌に掲載されました。