This is the legacy QM website and it is not updated.
これはレガシーQM Webサイトであり、更新されていません。
New website: https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp
A サイト秩序型ペロブスカイト酸化物 CaCu3Ru4O12 は金属的導電性を持っています。さらに興味深いことに、CaCu3Ru4O12 において d 電子系としては比較的電子有効質量の重い電子状態 (電子比熱係数: 84 mJ/(f. u. mol K2)) (f. u.: formula unit) が報告されていました。一方、局在した Cu2+ 3d 電子スピンと遍歴的な Ru4+ 4d 電子との近藤効果の存在の可能性と、その効果の電子有効質量増大への影響が議論されていました。
我々は ACu3Ru4O12 (A = Na, Na0.5Ca0.5, Ca, Ca0.5La0.5, La) を合成し、これらの磁化率、比熱、電気抵抗率の測定を進めた結果、CaCu3Ru4O12 に限らず A の種類、価数に依らず、どれも重い電子的振る舞いを示すことを明らかにしました。(下図に低温での比熱の振る舞いを示します。)さらに、得られた結果を基に ACu3Ru4O12 の重い電子状態を特徴づける Wilson 比、Kadowaki-Woods 比を決定でき、また、A に依る測定結果の変化の概観が rigid band のモデルで理解できることを示しました。従って、電子有効質量増大に主要な役割を担っているのは、近藤効果ではなく Ru の伝導電子の電子相関(状態密度)であると結論づけました。
この結果はJournal of the Physical Society of Japan誌に掲載されました。