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電子同士のクーロン反発によって伝導電子が動けなくなって絶縁体となっているMott絶縁体に対して、元素置換や圧力印加をすることによって伝導電子が動けるようにしてやると、銅酸化物の高温超伝導のように非常に興味深い現象が引き起こされます。 我々は、Mott絶縁体であるCa2RuO4にわずかに直流電流を印加することで、Mott絶縁状態をわずかに壊した状態を実現し、そこで巨大反磁性が表れることを明らかにしました。 反磁性とは、物質が磁石のN極にもS極にも反発するような性質です。 身の回りでも、プラスチック、銅、カエルなど、反磁性を示す例はたくさんありますが、いずれも非常に弱い効果でした。 例外的に強い反磁性を示す物質は熱分解グラファイトやビスマスが知られています。 完全反磁性を比較的低磁場で示す超伝導体を除けば、これらが地球上で最強の反磁性体で、これらトップ2は少なくとも50年以上もの間変わっていませんでした。 本研究で見つけた電流誘起の反磁性の大きさはこれらの反磁性体のそれをしのぐものであり、何十年かぶりに記録を塗り替えたことになります。 また電子間の相互作用が大きい物質では反磁性は生じないのが固体物理の常識であり、Mott絶縁体という相互作用が強い極限のような物質で大きな反磁性が生じたことは非常に驚きです。さらに、電流を用いてMott絶縁体の電気的・磁気的性質をコントロールできることを示したことは、応用的な観点からも価値があると考えています。