研究紹介のページです。
119Sn-NMRから見たアンチペロブスカイト酸化物Sr3-xSnOのSr欠損量による常伝導状態の変化を明らかにしました。
e-mail: kitagawa.shunsaku.8u + at + kyoto-u.ac.jp
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アンチペロブスカイト酸化物Sr3-xSnOはペロブスカイト酸化物の金属サイトと酸素サイトを入れ替えた構造を持っています。 当研究室によりSr欠損したものが超伝導になることが発見されました[1]が、Sr欠損が少ないものは半導体的な電気抵抗を示し、バンド計算からトポロジカル結晶絶縁体になっていると考えられています。また、Sr欠損系の試料合成が困難なことから我々はNMR測定という微視的なプローブを用いてSrを欠損させた試料、Sr欠損を抑えた試料それぞれの電子状態がどうなっているかを調べました。
左図は各サンプルでのNMRナイトシフトスペクトルです。Sr欠損が少ない試料も多い試料も二つのピークが観測され、試料中でSr欠損量の分布があることがわかります。Sr欠損量が多い試料(サンプルA、B)でピーク2が大きくなっていることからピーク2が超伝導を示す相だと考えられます。この相の核スピン格子緩和率1/T1は温度の比例し、値もSn単体金属相と大きく違わないことから、Sr欠損でホールがドープされ通常金属相になったものと考えられます。一方、ピーク1の1/T1は(右図)高温で温度に比例する振る舞いから外れます。これは、フェルミエネルギー近傍にディラックポイントもしくはバンドの底があることで理解可能で、Sr欠損量が少ない相の特異な電子状態を示唆しています。
この結果はPhys. Rev. B誌に掲載されています。 preprintはこちら。 固体量子による解説動画はこちら。
[1] M Oudah et al., Nat. Commun. 7, 13617 (2017).