研究紹介のページです。
NMRを用いてCeRuPOの圧力下相図を研究し、Ce(Ru1-xFex)POと比較しました。
e-mail: kitagawa.shunsaku.8u + at + kyoto-u.ac.jp
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強相関電子系では何らかのチューニングパラメーターを用いて磁気相関の強さやバンド幅を制御することで磁気秩序温度を制御できることが知られています。実験的には圧力、化学置換、磁場などがチューニングパラメーターとして用いられ、特に、圧力と化学圧力(等価数の化学置換は)は一般的に同じ効果を与えると考えられています。
CeRuPOは重い電子系では珍しいTC = 15 Kの強磁性体です。我々は先行研究においてRuサイトにFeを置換することによって磁気相関が2次元的になることで強磁性量子臨界点が現れることを明らかにしました。一方、圧力下電気抵抗測定から圧力下で反強磁性的な相が誘起されることが示唆されており、CeRuPOにおいてFe置換による化学圧力と圧力の違いを微視的な観点から調べる必要があります。
1.47 GPa, 2.15 GPaにおいて転移温度以下でNMRスペクトルは2つに分裂します。これは常圧の強磁性が高圧下で反強磁性に変化したことを表しています。さらにNMRスペクトルを詳細に解析することでゼロ磁場の磁気構造は面内にモーメントが向いているストライプ型の反強磁性であることがわかりました。
また、ナイトシフトと核スピン-格子緩和率の関係から磁気相関の次元性の圧力依存性を調べたところ、圧力下では三次元的な磁気相関が保たれていることがわかりました。これは、Fe置換によって2次元的に変化する場合と大きく異なっており、このことが相図の違いを引き起こしていると考えられます。我々の研究からCeRuPOでは圧力と化学圧力は全くの別物であり、そのことによって相図の多様性が現れることが明らかとなりました。
本研究は神戸大学での研究成果で藤秀樹教授、小手川恒准教授、菅原仁教授、松岡英一准教授との共同研究です。この結果はPhys. Rev. B誌に掲載されています。preprintはこちら。