研究紹介のページです。
AuTe2における圧力誘起超伝導を発見しました。
e-mail: kitagawa.shunsaku.8u + at + kyoto-u.ac.jp
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AuTe2はカラベラス鉱と呼ばれる天然に存在する鉱物でひしゃげた(変調のある)単斜晶の結晶構造をしています。AuTe2においては2.5GPa以上の高圧で結晶構造が三方晶に変化することが知られています。さらに最近、岡山大学の野原グループによってAuサイトにPtを部分置換することによって構造が三方晶に変化し超伝導が発現することが報告されました[1]。
本論文ではAuTe2の高圧相で超伝導が発現することを期待してAuTe2の圧力下電気抵抗、交流磁化率を測定しました。
図1に示すようにAuTe2は2.1GPa以上の圧力でゼロ抵抗を示し、超伝導になります。
図2は実験結果から得た圧力-温度相図です。詳細な実験の結果、超伝導は高圧相のみで現れることがわかりました。
論文ではさらにバンド計算を行い、実験結果と比較することで常圧のAuTe2にとって結晶構造がひしゃげていることが電子状態に影響を与えていること、Pt置換と圧力とで現れる超伝導は従来の理論の枠組みで理解が可能であることを明らかにしています。本実験結果はAuTe2のような天然に存在する単純な組成の物質でも外力を加えることで超伝導になる好例といえます。
本研究は岡山大学大学院自然科学研究科の石井博文氏、工藤一貴助教、野原実教授(試料作製)と神戸大学大学院理学研究科の播磨尚朝教授(バンド計算)との共同研究です。この結果はJ. Phys. Soc. Jpn.誌に掲載されています。
[1]K. Kudo et al., J. Phys. Soc. Jpn. vol.82, 085001 (2013).