本研究の目的は、強相関電子系における多体効果の本質を新たな視点で顕在化させるため、主に定常電流下の非平衡状態が創り出す新現象を確立するとともに、その機構の理解を深めることにある。研究対象の中心物質はモット絶縁体Ca2RuO4で、我々が最近発見した、電場誘起の金属-絶縁体転移と電流印加で安定化する金属状態の低温現象の詳細を明らかにして、平衡状態では実現しない電子状態の理解を深める。また、類縁酸化物や有機物でも同様の現象を探索することで、Ca2RuO4での新現象の特質と一般性を明らかにする。本研究を通じて、非平衡状態におかれた強相関電子系物質が生み出す創発現象の研究展開の世界的先駆けを目指す。
これらを遂行するために、前野(京都大)、寺崎(名古屋大)、中村・鈴木(久留米工大・広島大)、岡(東大)のグループが、ルテニウム酸化物の単結晶育成から、非線形・非平衡伝導の精密測定、そして物性解明まで、これまで培ってきた技術と知見を集結して取り組む。