CaSb2におけるs波超伝導の観測

CaSb2の結晶は「非共型」と呼ばれる特別な配置をとっており、これに起因して電子のエネルギーバンドが波数空間内の線に沿って4重縮退するDirac線ノードという構造を持つと考えられています。我々の研究室では2020年にCaSb2が超伝導を示すことを発見しました。非共型な結晶構造やDirac線ノードを持つ物質では非従来型の超伝導が起きる可能性があるため、CaSb2の超伝導状態がどのようなものなのかが注目されていました。

我々はCaSb2に対して磁場をかけずに測定できるNQR測定を行い,核スピン-格子緩和率の温度依存性を測定することで、CaSb2の超伝導が従来型のs波超伝導であることを支持する結果を得ました。s波超伝導体では超伝導転移温度直下で核スピン-格子緩和率がコヒーレンスピークと呼ばれるピーク構造を示します。また、更に低温では超伝導ギャップにより指数関数的に減衰します。今回得られた結果はこれらの特徴を満たしており、BCS理論に基づく式でよくフィットできています。今後の展開としては、圧力によって超伝導状態がどう変化するかを解明することになります。

本研究はアメリカのメリーランド大のPaglione教授のグループとの共同研究です。論文はオープンアクセスなので、下のリンクからどなたでも無料でご覧いただけます。

CaSb2の核スピンー格子緩和時間T1の温度の逆数に対する依存性。内挿図:CaSb2の核スピンー格子緩和率の温度依存性。超伝導亭温度直下でのピークおよび低温域での指数関数的振る舞いが見られ、BCS理論に基づく式でよくフィットできる(灰色の曲線)。青線は交流磁化率の温度依存性で、超伝導転移によって減少する。

論文情報

Takahashi, H; Kitagawa, S; Ishida, K; Kawaguchi, M; Ikeda, A; Yonezawa, S; Maeno, Y

S-Wave Superconductivity in the Dirac Line-Nodal Material CaSb2 Journal Article

In: Journal of the Physical Society of Japan, vol. 90, pp. 073702, 2021.

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