ジグザグ鎖構造をもつ磁性体で現れる電気的中性な準粒子の発見

 現D2の堀さんの研究成果が、2023年7月22日に、国際学術誌「Communications Materials」にオンライン掲載されました。

 近年、固体物理では、通常の磁性体で知られていない秩序状態や準粒子の研究が注目されています。なかでも系全体のスピンの配列が一意に定まらないフラストレーション現象ではそのような特異な物性が発現することが期待されています。本研究グループは、希土類のイッテルビウム原子(Yb)がジグザグ鎖を組む磁性半導体YbCuS2に着目し、希土類ジグザグ鎖によるフラストレーションの効果について調べました。銅(Cu)核の核四重極共鳴(NQR)測定および比熱測定の結果、YbCuS2が非整合反強磁性秩序を示し、その秩序相で負の電荷をもつ電子とは異なる電気を運ばない電気的中性な準粒子が存在していることを明らかにしました。

 本研究で得られた結果は従来のジクザグ鎖フラストレート磁性体の理論では説明できないことから、新しい理論の必要性を示しており、YbCuS2が新たなフラストレート磁性体のプラットフォームとして有望であることを明らかにしました。また、本研究で発見した中性準粒子は通常の電子とまったく異なる性質をもつため、次世代量子コンピュータや省エネルギーメモリデバイスなどの新しいデバイスへの応用が期待できます。

本成果に関するレスリリースが公開されています。
広島大学版:https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/78308
学術変革(A)「アシンメトリ量子」にもニュースとして取り上げていただいています。

追加情報
YahooニュースTii技術情報EE Timesに取り上げられました。
堀さんの母校、竹田高校にも取り上げていただきました!

日本物理学会ホームページにプレスリリース情報を掲載していただきました。

論文情報

Hori, F; Kinjo, K; Kitagawa, S; Ishida, K; Mizutani, S; Yamamoto, R; Ohmagari, Y; Onimaru, T

Gapless fermionic excitation in the antiferromagnetic state of ytterbium zigzag chain Journal Article

In: Communications Materials, vol. 4, pp. 55, 2023.

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