YbCuS2、磁場中常磁性もヘン!?

磁性半導体YbCuS2は、イッテルビウム原子(Yb)がジグザグ鎖構造を形成しており、最近接と次近接の磁気相互作用の競合による磁気フラストレーションの効果が期待できます。実際、我々のグループはゼロ磁場の核四重極共鳴(NQR)測定から、約1ケルビン以下では磁気モーメントが通常で期待されるものに比べて小さい非整合反強磁性状態であること、その秩序相内で電気的中性な準粒子が存在することを発見しました。また、磁場によって磁気秩序状態が大きく変化し、図(a)のような特異な磁場-温度相図が報告されています。これらは通常の反強磁性体では説明できない現象です。

本研究では、さらに核磁気共鳴(NMR)測定を用いて、YbCuS2における磁場中常磁性の磁気特性を微視的な観点から調べました。その結果、図(b)のように約50ケルビンで核スピン格子緩和率1/T1に謎のピークが現れ、その異常が磁場によって強く抑制されることがわかりました。また、3テスラ以上の磁場では、低温の1/T1が上昇する現象を観測しました。これらの結果は、常磁性状態においても磁場に誘起された大きな変化が現れることを示唆しています。

本研究成果は、2025年1月29日に、学術誌「Journal of the Physical Society of Japan」にオンライン掲載されました。

Reference

Hori, F; Kitagawa, S; Ishida, K; Ohmagari, Y; Onimaru, T

Magnetic-Field Dependence of Paramagnetic Properties Investigated by 63/65Cu-NMR on the Yb Zigzag-Chain Semiconductor YbCuS2 Journal Article

In: Journal of the Physical Society of Japan, vol. 94, pp. 024706, 2025.

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