YbAgSe2、中性準粒子見えず

系全体のスピンの配列が一意に定まらないフラストレート磁性体は、特異な物性が発現することが期待されているため、精力的に研究がなされています。最近、我々のグループはイッテルビウム原子(Yb)がジグザグ鎖を組むフラストレート磁性体YbCuS2において、核スピン格子緩和率1/T1が温度の一次に比例する振舞いを発見し、電気を運ばない電気的中性な準粒子が存在することを明らかにしました。

このYbCuS2 で見られた新奇な準粒子の起源や性質を調べるためには、他の関連物質との比較が必要です。そこで本研究では、YbCuS2 と類似した結晶構造を持つYbAgSe2 においてセレン(Se)核の核磁気共鳴測定を行いました。その結果、YbCuS2で見られた1/T1の温度の一次に比例する振舞いはYbAsSe2において観測されませんでした。この結果から、YbCuS2 で見られた中性準粒子はYbCuS2 に特有な現象である可能性が考えられます。

本研究は広島大学の鬼丸孝博教授のグループとの共同研究です。

Reference

Hori, F; Kitagawa, S; Ishida, K; Mizutani, S; Ohmagari, Y; Onimaru, T

Gapped Spin Excitation in Magnetic Ordered State on Yb-Based Zigzag Chain Compound YbAgSe2 Journal Article

In: Journal of the Physical Society of Japan, vol. 93, iss. 11, pp. 114702, 2024.

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