UTe2の超伝導スピン磁化率の異方的応答を発見

UTe2はスピン三重項超伝導状態が期待されている物質です。2018年秋の発見以降、多くの研究がなされてきましたが、超高磁場中での超伝導や圧力下での超伝導多重相など唯一無二の特徴を示すことが示され、ますます盛んに研究が進められています。

私たちのグル-プはUTe2の超伝導対称性を明らかにするためにNMR測定を行っています。NMRは超伝導状態のスピン磁化率を測定できる限られた測定手段であり、スピン自由度が重要であるスピン三重項超伝導の対称性の解明に対して力を発揮します。今回、私たちはb軸磁場、c軸磁場に対してスピン磁化率の温度依存性の磁場変化を測定しました

1Tではb軸、c軸どちらの磁場に対してもスピン磁化率が減少します。これにより超伝導対称性はAuもしくはB3uのどちらかに制限されます。また5.5Tではb軸磁場中ではスピン磁化率が減少するのに対し、c軸磁場中ではスピン磁化率の減少は観測されません。つまり、UTe2の超伝導はb軸磁場とc軸磁場に対して異なる応答を示すということです。これはスピン三重項超伝導に期待されるふるまいで、これはUTe2でスピン三重項超伝導が実現してることを示す新たな強い証拠になります。

UTe2のスピン磁化率の温度依存性。b軸磁場では5.5Tでも減少するが、c軸磁場では5.5T下では超伝導状態でスピン磁化率が減少しない。

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Article information

Nakamine, G; Kinjo, K; Kitagawa, S; Ishida, K; Tokunaga, Y; Sakai, H; Kambe, S; Nakamura, A; Shimizu, Y; Homma, Y; Li, D; Honda, F; Aoki, D

Anisotropic response of spin susceptibility in the superconducting state of UTe2 probed with 125Te − NMR measurement Journal Article

In: Physical Review B, vol. 103, no. 10, pp. L100503, 2021.

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