ハニカム近藤格子化合物CePt6Al3におけるPd置換効果

三角格子やカゴメ格子、ハニカム格子などを組む希土類金属間化合物では、近藤効果および磁気フラストレーションによって特異な量子臨界現象が実現すると予想されています。CePt6Al3はセリウム(Ce)原子がハニカム格子を形成しており、近藤効果に加えて、ハニカム格子に起因した磁気フラストレーションの効果が期待されています。我々のグループは、白金(Pt)サイトをパラジウム(Pd)で置換したCe(Pt1−xPdx)6Al3に対して核磁気共鳴(NMR)測定を行い、低温の磁気状態を調べました。その結果、x=0では重い電子状態が0.1Kまで維持されること、Pd置換系では反強磁性秩序が現れることを確認しました。また、磁気転移温度はPd置換量を増加させてもほとんど変化しません。これは典型的な重い電子系とは異なる振る舞いであり、磁気フラストレーションの寄与が考えられます。さらに、Pd濃度の増加に伴い、遍歴的なスピン密度波型の反強磁性状態から、より局在した磁気モーメントを持つ反強磁性状態へと変化する様子(クロスオーバー)が観測されました。これらの結果は、Ce(Pt1−xPdx)6Al3が近藤効果と磁気フラストレーションの相乗効果を探るための有望なプラットフォームであることを示しています。
 本研究成果は、2025年7月30日に、学術誌「Journal of the Physical Society of Japan」にオンライン掲載されました。

Reference

Kitagawa, S; Hori, F; Ishida, K; Oishi, R; Shimura, Y; Onimaru, T; Takabatake, T

Antiferromagnetic Order and Magnetic Frustration in the Honeycomb Heavy-Fermion System Ce(Pt1−xPdx)6Al3: 27Al and 195Pt NMR Studies Journal Article

In: Journal of the Physical Society of Japan, vol. 94, pp. 094702, 2025.

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