私たちが興味をもっている研究対象物質は、スピン三重項超伝導を始めとする非従来型超伝導や量子臨界現象を示すルテニウム酸化物、および鉄ヒ素系超伝導体、ウラン系化合物、有機物超伝導体などです。
これらのうちいくつかの物質については高純度試料を赤外線集中加熱炉などを用いて最高2500ケルビンまでの温度で育成しています。そしてエックス線を用いて得られた結晶の構造解析・評価もおこなっています。これらの育成した試料を国内・海外の研究グループにも送ることにより、共同研究も活発におこなっています。
超伝導などの興味深い現象は、低温にしてはじめてみられます。私たちは最低到達温度20ミリケルビン(0.02ケルビン)まで冷やすことにより、電気的・磁気的・熱的性質を電気抵抗・磁化率・比熱・核磁気共鳴(NMR)といった手段を用いて調べています。さらに、最大18テスラ(18万ガウス、ちなみにピップエレキバンは1000ガウス程度です)までの定常磁場を低温下で積極的に利用することにより、興味深い物性をより深く理解することが可能です。
超伝導は、圧力をかけてはじめて現れることがあります。また、近年では圧力によってある秩序相を抑制して生じる興味深い現象も研究されています。私たちの研究室では圧力セルを使用して、約10 GPaまでの静水圧をかけてこれらの物質を低温で測定することが可能です。この圧力環境でNMRや電気抵抗測定などをおこなっています。
このように、私たちは試料作りから測定まで、温度0.02-2500ケルビン(5桁)、磁場1-180000ガウス(6桁)、またときには10 GPaの圧力までの幅広い領域をカバーできる環境を最大限に駆使しています。さらには新しい装置開発も積極的におこなうことにより、さまざまな興味深い現象の解明に向けて日々励んでいます。
試料育成関係装置
ボックス炉
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上にあるのがスーパーカンタル炉。最高温度1600度。
下にあるのがマッフル炉。最高温度1050度程度。
ボックス型で汎用性が高く、焼成プログラムを組めるので、研究室で最も人気の炉。
X線回折装置
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X線回折装置。作成した試料の評価に威力を発揮する。
3ゾーンチューブ炉
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3領域での温度制御(最大1200度)が特徴の横型管状炉。この炉は化学輸送法による単結晶育成等に威力を発揮する。
アイソトープ炉
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/isotope1-225x300.jpg)
試料を同位体置換する際に使われる炉。 同位体ガスを炉内で循環させることにより置換を行う。
走査型電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析装置(EDX)
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/sem1-300x225.jpg)
SEM: 電子線で試料を走査して情報を得る顕微鏡。
EDX: 電子を照射した際に放出されるX線を分析して、試料にどのような元素が含まれるかを調べられる。
ダイボンダー
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顕微鏡で確認しながら細かい素子を作成することができる。
アーク炉
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合金試料を作るときに使う。金属の溶接にも使える。
赤外線集中加熱炉
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/fz1-225x300.jpg)
単結晶を育成できる炉。 主にルテニウム酸化物の高純度単結晶育成に用いている。
ラウエX線回折装置
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主に試料の方位解析に用いる。
低温・磁場中測定装置
3He冷凍機(Heliox)
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3He(ヘリウム3)を用いた冷凍機。温度0.3 Kまで到達可能。3台所有。
3軸ベクトルマグネット
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直交した3つの超伝導磁石からなり、それぞれ1 T, 0.2 T, 0.2 Tまで到達可能。 磁場の方向を自在に操れる。
希釈冷凍機(Cryoconcept社製)
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/cryo1-225x300.jpg)
11テスラマグネット(左側の青い筒)の内部に冷凍機が入っている。 このシステムで16 mK + 11 Tという極限環境での測定が可能。
ベクトル超伝導マグネット+希釈冷凍機(Oxford社製)
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/vecmag1-300x225.jpg)
ベクトルマグネットと希釈冷凍機。磁場方向を自由自在に制御することができる。温度0.05 K、磁場5 Tまで到達可能。
比熱・磁気抵抗等測定装置(PPMS)
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/ppms1-225x300.jpg)
温度0.3 K、磁場7 Tまでの測定可能。
磁化測定装置(MPMS)
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/mpms1-225x300.jpg)
SQUIDを用いた磁化測定機。温度1.8 Kから800 K、磁場7 Tまで到達可能。
誘電率測定プローブ(C-dipper)
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/cdipper1-94x300.jpg)
ヘリウムベッセルに挿すだけで低温での誘電率測定ができるプローブ。
圧力セル
ピストンシリンダーセル
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/pistoncylindercell1-224x300.jpg)
試料空間が大きい(> 100 mm3)ことが特徴の圧力セル。当研究室での最高到達圧力は2.5 GPa程度である。 このセルはNMR用の希釈冷凍機と組み合わせて約80 mKまで冷却することができる。
インデンターセル
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/indentercell1-300x279.jpg)
小型で到達圧力が比較的高いことが特徴の圧力セル。約4.5 GPaまでの圧力を印加できる。
NMR・NQR測定装置
ガラスデュワー
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/0231-300x241.jpg)
磁場を要しない核四重極共鳴(NQR)専用の小型デュワーで、ガラス製。N2ジャケット搭載。He使用量が少なく、気軽に利用できる。1.3 Kまで到達できる。
5テスラ 横磁場スプリットマグネット
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/0181-225x300.jpg)
プローブを回転させることで、試料の磁場角度依存性を調べることができる。 N2ジャケットを搭載し、断熱性が非常に良く、通常利用なら10日間もHeトランスファー不要。
NQRデュワー
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マグネットを持たないNQR専用デュワー。
8テスラ 横磁場スプリットマグネット
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/0201.jpg)
プローブを回転させることで、試料の磁場角度依存性を調べることができる。 NMR測定に必要な磁場の均一性を保ちつつ、最大8 Tまで出せる珍しい横磁場マグネット。N2ジャケット搭載。
New 15テスラ マグネット
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/0211-300x225.jpg)
最大15 Tまでの強磁場と、10ppm/cm3の高い磁場均一性をもつ。 N2ジャケットを搭載し、通常利用ならHeトランスファーが1週間も不要。
Oxford 15/17テスラ マグネット
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(2018年8月まで使用)通常利用で15 T、ポンプで利用時には最大17 Tの強磁場が得られる。
16テスラ マグネット
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(2018年9月から運用)最大16 Tの強磁場が得られる、高い磁場均一性をもつ巨大マグネット。ヘリウムは3-4日の頻度で一度に90 L程度トランスファーする。
NMR用小型希釈冷凍機
![](https://ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/qm_media/2019/11/0241-207x300.jpg)
NMR・NQR測定用の小型希釈冷凍機。 ガラスデュワーを除く上記の5台のデュワーに挿入して測定することができる。 到達温度は約60 mKで、試料を直接3He-4He混合液に浸すのが特徴。 NMR・NQR用の希釈冷凍機は合計で3台あり、うち1台では圧力セルを入れて測定することができる。