私たちは、固体中の電子が強く相互作用している強相関電子系を舞台とした多様な物性現象を研究しています。
室温よりはるかに低い温度では物質は量子統計力学的効果に支配され、超伝導に代表される日常感覚とはかけ離れた現象が起こります。このような現象の発見や理解を目指して私たちは大きく分けて2つのグループで日々研究に励んでいます。*ゼミやその他研究室活動は2グループ合同で行ってます
1. ルテニウム酸化物超伝導体 Sr2RuO4をはじめとするトポロジカル超伝導

Sr2RuO4は私たちの研究室で最も盛んに研究されている超伝導体の一つです。
我々は高純度な単結晶育成及び詳細な物性測定を通じて長年の謎である超伝導状態の解明を目指しています。
2. 新物質開発

新物質を見つけることは新たな物理現象を開拓するうえで非常に重要です。
当研究室ではフローティングゾーン法やフラックス法を用いて銀鉛酸化物超伝導 Ag5Pb2O6、巨大磁気抵抗を示す擬二次元導電体 PdCoO2、空間反転対称性の破れた超伝導体CaIrSi3、新超伝導体La3Pt4、逆ペロブスカイト酸化物超伝導Sr3-xSnO など多数の物質の合成および結晶の純良化に成功してきました。
3. FIBを用いた微細加工

トポロジカル物性を観測するためには試料形状が重要になってきます。我々は試料を微細加工することで新たな量子現象や新奇性質の顕在化を目指しています。

また、微細加工によって試料サイズを小さくすることで電流を流したときの試料全体の発熱量を抑える効果も期待できます。
4. ネマティック超伝導 CuxBi2Se3

比熱の磁場方向依存性から
クーパー対が物質の持つ回転対称性を自発的に破った「ネマティック超伝導」状態が実現していることを初めて報告しました。
一軸ひずみによって超伝導対称性の方向をコントロールすることにもチャレンジしています。
5. 金属-絶縁体転移

赤外線カメラを用いてCa2RuO4の温度分布を明らかにします。暗い部分(低温)が金属、明るい部分(高温)が絶縁体です。この手法で電流によって金属絶縁体がどのようにおこるのかの解明を目指しています。
6. NMR(核磁気共鳴法)

NMRは原子核のスピンを用いて電子の状態を調べる測定手法で、微視的に電子状態、磁気状態を測定できるパワフルなツールです。我々はNMRを用いて超伝導体から磁性体まで幅広い物質の電子状態の解明を目指しています。
7. U系強磁性超伝導

長い間、強磁性と超伝導は相容れぬ存在と考えられていましたが、Uを含む強磁性超伝導ではウラン原子の5f電子が強磁性と超伝導を担い、それらが共存していると考えられています。

私たちはこれまでにUCoGeにおいて強磁性ゆらぎによるスピン三重項状態が実現している可能性を示す多くの実験結果を報告してきました。
8. 磁性と超伝導および量子臨界現象

磁気転移が絶対零度になる点、量子臨界点近傍では多くの面白い磁気状態や超伝導状態が現れます。
この量子臨界点近傍の物性解明も私たちの研究テーマの一つです。
9. ナノ粒子における量子サイズ効果

ナノ粒子では通常のバルクの理論と異なる量子的なエネルギー準位の離散性による効果(磁性、絶縁体転移など)が期待できます。
我々はNMR測定を用いてPtナノ粒子における量子サイズ効果を確認しました